大石浩之の氏神ノート境内樹木台風磐田市補助金

境内の危険木と台風 9月の上陸数1.0個と伐採費20万円

公開 2026-08-25/文:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

記事内容をもとに生成したイメージ:境内の危険木と台風 9月の上陸数1.0個と伐採費20万円
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境内の木が隣の家と市道にかぶっています。切るお金は、誰が出すんでしょうか

原則は木の所有者、つまり神社です。民法233条は越境した枝を竹木の所有者に切除させると定め、717条2項は倒木の損害に所有者の賠償責任を及ぼします。磐田市危険木除去事業費補助金は、樹高10メートル以上・胸高直径20センチメートル以上の木を根元から切る費用の2分の1、上限20万円を出しますが、剪定と枝払いは対象外です。

9月の台風上陸数は平年値1.0個 ── 年間3.0個の3分の1が9月に来る

気象庁「台風の平年値」によると、9月に日本へ上陸する台風の数は1.0個で、12か月のうち最も多い。年間の上陸数は3.0個だから、およそ3分の1が9月に寄っている。統計期間は1991年から2020年までの30年平均である。9月は接近数3.3個、発生数5.0個で、接近数は8月と並んで最多だった。

上陸数(平年値)接近数(平年値)発生数(平年値)
7月0.6個2.1個3.7個
8月0.9個3.3個5.7個
9月1.0個3.3個5.0個
10月0.3個1.7個3.4個
年間3.0個11.7個25.1個

気象庁はこの表で「上陸」を、台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸線に達した場合と定義している。「接近」は中心が国内のいずれかの気象官署から300キロメートル以内に入った場合を指す。9月と10月を足すと1.3個で、秋の2か月に年間の4割強が入る。端数処理のため各月の合計と年間値は必ずしも一致しない旨の注記も付いている。

秋の大祭に向けた境内の奉仕は、まさにこの9月に集中する。枝を落として掃く作業と、その枝を折りに来る風とが同じ月に重なっている。氏子と総代がこの時期に払っているものを内訳で数えると三つある。半日から一日を潰す時間、業者に払う現金、高所での作業に使う体力とそこに伴うけがの危険である。三つ目だけは、金で代えがきかない。境内で氏子が負う出費は木だけではなく、2026年5月には浜松市浜名区三ヶ日町の4社で屋根の銅板が剥がされている。その費用の内訳は「神社の屋根の銅板盗難対策 三ケ日4社と検挙率31.6%」に書いた。

木のように動かせない危険物とは別に、立看板、掃除道具、祭具の箱などを風の前に減らす順序は「静岡の神社の突風対策 JEF3で飛散物を減らす」に整理した。

切る費用は木の所有者が出す ── 民法233条・717条2項と市道の窓口

境内木を切る費用の出どころは、法律の側から見ると単純である。木の所有者が出す。民法(明治29年法律第89号)第233条第1項は「土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる」と定めている。境内の木が隣家に張り出していれば、切除する義務を負うのは神社の側であり、その費用も神社の側にある。

2023年(令和5年)4月1日施行の改正で、同条に第3項が加わった。①切除するよう催告したのに相当の期間内に切除しないとき、②竹木の所有者やその所在を知ることができないとき、③急迫の事情があるとき。この3つのいずれかなら、越境された側が自分で枝を切り取れる。裁判をしないと切れなかった状態が、条件付きで変わった。

ただし、改正法に費用負担の条文は置かれていない。法務省の法制審議会民法・不動産登記法部会の部会資料7は、改正前の枠組みでは民事執行法第171条第1項・第4項により「竹木所有者の費用負担で第三者に切除させる方法」によると整理し、自ら切り取る新ルートの費用については竹木所有者の負担・越境された側の負担・折半の3案を検討課題として並べていた。誰が払うかは条文の文字では決まっていない。

倒れたあとの責任は、もっとはっきりしている。民法第717条第1項は土地の工作物の設置または保存の瑕疵による損害に占有者の賠償責任を定め、占有者が発生を防止する必要な注意をしたときは所有者が賠償するとする。同条第2項は、この規定を「竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する」と書く。境内の木が倒れて隣家の屋根や通行人に損害を与えれば、この条文の射程に入る。同じ条文が、木ではなく石に向かうこともある。石造の鳥居は建築基準法施行令138条の工作物に指定されておらず、点検を命じる制度が無いまま717条だけが残る構図については「磐田の鳥居の点検 建築基準法の対象外と神戸市の窓口」に書いた。

市道に張り出した枝を市が切ってくれるわけでもない。磐田市の「道路へ張り出した樹木などの管理のお願い」(2024年11月21日更新)は「土地及び樹木の所有者の方は、樹木等の適正な管理をお願いします」と呼びかけている。通行者の事故が発生した場合は土地所有者が責任を問われることがある、とも明記する。管理費用は所有者の負担である。目安として、車道の高さ4.5メートル・歩道の高さ2.5メートルに樹木等が入らない建築限界(道路法第30条・道路構造令第12条)も併記されている。窓口は磐田市道が市の道路河川課、国道・県道(国道1号を除く)は袋井土木事務所維持管理課。社叢が県道に面している社なら、市に電話しても話は進まない。

磐田市危険木除去事業費補助金 ── 上限20万円、ただし剪定には1円も出ない

磐田市には危険木除去事業費補助金がある。磐田市危険木除去事業費補助金交付要綱(平成27年4月1日施行)第2条は、危険木を「樹高が10メートル以上、かつ、樹幹の太さが胸高直径20センチメートル以上である樹木で、倒木により交通の支障となるおそれのあるもの」と定義する。第3条は対象を「危険木が存する土地を所有し、占有し、又は管理する者が、危険木を除去するために要する経費(手数料又は委託料に限る。)」とし、交付額は経費の2分の1以内・20万円を限度とする。予算の範囲内の制度である。

意外なのは、除外の書き方のほうである。市のページは注意事項として「剪定や枝払いは対象となりません。対象となる木が、再び補助の対象となることがないように、根元から切り倒す場合を対象とします」と明記している。要綱が対象経費を手数料と委託料に限っていることと合わせると、意味は一つに絞られる。氏子が自分たちで枝を落とした一日も、借りた高所作業車の代金も、この補助では戻らない。

言い切っておく。境内の木は、氏子が体で払うほど補助から遠くなる。業者に委託料を払い、根元から切り倒したときだけ半分が戻る。秋の奉仕で総代と氏子が半日かけて枝を落とす作業は、制度の外側にある。制度の欠陥を責める話ではなく、道路交通の安全の確保を目的にすると要綱第1条が書くとおりの線の引き方である。

手続の順序も要綱にある。第4条は交付申請書に見積書・事業実施前の写真・位置図を添えることを求める。第7条は完了報告の期限を、事業完了の日から7日を経過した日か、交付決定のあった年度の末日の早いほうまでとする。市のページは「実施後の申請はできません」と重ねて書く。切ってから申請しても通らない。第5条第4号には、市税を滞納していないこととする条件もある。

対象は磐田市道に関わる木に限られ、隣家側や参道の内側へ倒れる木は入らない。一方、要件は「所有し、占有し、又は管理する者」で、名義が誰かは問われていない。境内地が個人名義のまま残る社でも、管理者として相談する余地はある。境内地が今の形になった経緯は「朱印地と除地」に整理してある。

造園工25,800円で割り戻す ── 上限20万円は約5人日ぶん

上限20万円が、どれくらいの作業量に相当するのかを数える。国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」によると、静岡県の造園工は所定労働時間内8時間あたり25,800円。全国全職種の加重平均値25,834円との差は34円しかない。同じ資料が参考値として示す必要経費込みの金額は、静岡県の造園工で38,100円である。法定福利費の事業主負担分・労務管理費・安全管理費・宿舎費などを加えた額で、単価との差は12,300円、約1.48倍になる。

この38,100円で割り戻すと、補助の上限20万円は約5.2人日にあたる。補助率は2分の1だから、上限まで受け取るには工事費40万円が必要で、約10.5人日ぶんである。人日の見積は木の高さ・傾き・電線や隣家との距離・搬出経路で大きく動く。これは金額を体感に置き換える物差しであって、見積書の代わりにはならない。

危険木の伐採より日常的な作業である草刈りを、静岡県最低賃金の答申額1,154円で時間換算し、氏子作業と外注を比べたのが「神社の草刈り外注比較」である。造園工の設計労務単価とは用途が違うため、同じ時間単価として混ぜずに読む必要がある。

伐採工事費補助額(2分の1・上限20万円)神社の自己負担38,100円換算の人日
20万円10万円10万円約5.2人日
40万円20万円20万円約10.5人日
80万円20万円60万円約21.0人日
150万円20万円130万円約39.4人日

自己負担を氏子戸数で割ると、負担の顔つきが変わる。自己負担60万円は、氏子1,030戸の社なら1戸あたり約583円、300戸なら約2,000円、60戸なら1万円である。同じ1本の木を切っても、分母が17分の1なら1戸あたりは17倍になる。分母の数え方は「空き家の氏子費 静岡県の空き家率16.7%と当番の分母」に別に書いた。空き家を分母に入れるかどうかで、この表の数字はまた動く。

分子の側も毎年上がる。この単価は全国全職種の単純平均で前年度比4.5%の上昇、平成25年度の改定から14年連続の引き上げで、平成24年比+94.1%になった。屋根の葺替えを先送りすれば高くなるのと同じことが、伐採にも起きる。人件費の水準は「神社の修繕費 労務単価25,834円と奉賛金の1戸あたり」に詳しく書いた。

総代の側で1つ減らせること ── 「切る木」より先に「切らない木」を決める

今の人数で回すために減らせるものを、1つだけ挙げる。境内図に「切らない木」を先に塗っておくことである。毎年の奉仕の前に「どこまで切るか」を一から話し合う時間が、これでいちばん短くなる。手を出さない木、見るだけの木、業者に出す木。3色で足りる。

磐田市の市指定文化財一覧(2026年8月21日更新)には天然記念物が12件あり、うち4件が神社の境内木である。須賀神社クス(西島)、天御子神社のヤマモモ(見付)、浅間神社のヤマモモ(大原)、諏訪神社のヤマモモ(富里)。4件のうち3件がヤマモモで、いずれも平成17年(2005)11月21日の指定だった。文化財として木を守る負担は、氏子の側にかなりの割合で乗っている。

天御子神社のヤマモモは、境内後方に立つ雄株で、高さ15.5メートル、根回り4.7メートル、目通り4.5メートル、推定樹齢200年から300年。平地部のヤマモモとしては最大級とされ、所有者は淡海國玉神社である。この高さ15.5メートルは、磐田市の危険木の定義のうち大きさの要件(10メートル以上)を優に超える。境内で最も大きい木は、たいてい最も切りにくい木でもある。指定文化財の現状を変えるのにどんな手続が要るかは、磐田市文化財保護条例の条文を市の公開資料から確認できなかった。切る前に市の文化財課に聞く、という順序だけは動かないと私は考えている。

ここから先は、私が現場で見た一場面ではなく、不動産業をしている者としての考えとして書く。土地の値段を見るとき、私はまず道路と境界と名義を見る。木も同じ順序で見るべきだと思っている。幹がどこに立つかではなく、枝先と根が境界線をどれだけ越えているかで費用を負う相手が決まるからだ。境内の木は神社のものだから、切る金は氏子が出す。信仰の話ではなく、所有の話である。

ただし、私にも見分けられないことがある。どの木が危ないのかである。高さ10メートルと胸高直径20センチメートルは外から測れるが、幹の内部が空洞かどうかは外から分からない。樹木医の診断にいくらかかるのか、磐田市内の相場も私は確認できていない。ここは未確認のまま残す。だから「切る木」より先に「切らない木」を決めるほうが、素人にできる順序だと考えている。

今日できる確認を3つ書く。1つ、境内の木で、高さがおおむね10メートルを超え、胸の高さの幹の直径が20センチメートルを超え、倒れたら市道を塞ぐ位置にあるものを数える。2つ、その木が磐田市の指定文化財一覧に載っていないかを確認する。3つ、補助を使うなら着工前に道路河川課へ相談する。事後の申請は受け付けられない。境内の維持に誰がどれだけ体を使ってきたかは「境内の清掃と奉仕」に整理してある。

木が倒れて人にけがをさせた場合の賠償を保険で拾えるかどうかも、あわせて確かめておきたい。自治会活動保険の免責には地震・噴火・洪水・津波などの天災が挙がっており、中止費用が出るのは降水で中止したときに限られる。保険料の内訳と、祭礼が対象になる条件は「祭りの保険を比べる 1世帯97円と年715円」に書いた。そもそも台風のときに境内へ人が来るのかどうかは、市の指定避難所の一覧を見ると輪郭が出る。43施設に神社が1社も入っていない事実と、それでも鍵の段取りが要る理由は「磐田市の指定避難所43施設に神社はゼロ」に書いた。

氏子の一人として、商売の目で見るとこうなる。社叢は伝統だから全部残せとも、危ないからまとめて切れとも、私は言わない。書いたのは、切る金がどこから出るのか、その金が何人日ぶんなのか、市の補助が届く範囲がどこで切れているのか、それだけである。今年の秋に結論を出さなくてもいい。ただ、9月の上陸数が1.0個で年間最多だという事実は、決めない年にも変わらない。

よくある確認

境内の木が隣の家に越境しています。神社が切らないといけませんか。

民法233条1項は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるとき、その竹木の所有者に枝を切除させることができると定めています。境内木の所有者は神社ですから、切除の義務も費用も神社の側にあります。2023年4月1日施行の改正で、催告しても相当の期間内に切らないときなどは隣家が自ら切り取れるようになりましたが、その費用を誰が負うかの条文は置かれていません。

磐田市の危険木除去事業費補助金は、神社の境内木でも使えますか。

交付要綱は対象を「危険木が存する土地を所有し、占有し、又は管理する者」とし、宗教法人を除いていません。ただし危険木は樹高10メートル以上・胸高直径20センチメートル以上で、倒木により交通の支障となるおそれのある木に限られます。補助は経費の2分の1以内・上限20万円で、剪定や枝払いは対象外、実施後の申請もできません。事前に道路河川課へ相談してください。

市指定天然記念物になっている境内木が危ないと感じたら、どうすればよいですか。

磐田市の市指定文化財一覧には天然記念物が12件あり、うち4件が神社の境内木です。指定を受けた木は通常の伐採と同じようには進みません。現状を変えるのに要する手続について磐田市文化財保護条例の条文は確認できていないため、まず市の文化財課へ相談し、道路にかかる木であれば道路河川課にも相談する順序を勧めます。個別の判断は専門家に確認してください。

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出典・確認先

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と、氏子総代や神社庁の窓口にご確認ください。本記事は一般的な情報であり、特定の神社・家・土地についての判断ではありません。

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この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。氏神や祭りの担い手の話は、家や土地をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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