大石浩之の氏神ノート祭礼保険当番自治会磐田市

祭りの保険を比べる 1世帯97円と年715円

公開 2026-08-27/文:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

記事内容をもとに生成したイメージ:祭りの保険を比べる 1世帯97円と年715円
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秋の例大祭で当番が回ってきました。祭りの保険はいくらで、雨で中止したらお金は出るのでしょうか

共栄火災海上保険の自治会活動保険は、Aコースが1世帯97円に加えて1自治会あたり定額8,650円かかります。14世帯の町なら年10,010円で1世帯715円、10,104世帯なら1世帯78円です。中止費用が出るのは降水で中止した場合に限られ、熱中症は傷害の対象外です。

「1世帯97円」は賠償責任だけの値段 ── 自治会活動保険を分解する

共栄火災海上保険株式会社の「自治会活動保険」は、町内会や自治会が主催する祭り・運動会などの地域活動中に起きた事故を補償する保険である。約款の構成は賠償責任保険普通保険約款に自治会活動特別約款を付けた形で、保険期間は1年。パンフレット(2024年3月版・取扱代理店は株式会社ジェイエイアクト/2026年8月27日確認)には、A・B・C・Dの4つの契約コースが並んでいる。祭りの当番の間でよく引かれる「1世帯97円」は、このうちAコースの賠償責任の単価であって、保険料の全額ではない。

補償項目AコースBコースCコースDコース
賠償責任の支払限度額(身体・財物共通)2,000万円3,000万円5,000万円1億円
賠償責任の保険料(1世帯につき)97円164円253円455円
傷害 死亡・後遺障害200万円300万円500万円1,000万円
傷害 入院保険金日額1,000円2,000円3,000円5,000円
傷害 通院保険金日額500円1,000円1,500円2,500円
傷害見舞費用(支払限度額)10万円10万円10万円10万円
費用損害の保険金額50万円50万円50万円50万円
費用損害の保険料(1自治会につき)8,650円8,650円8,650円8,650円

表の最下段を見てほしい。費用損害の保険料8,650円は、世帯数に関係なく1自治会につき定額でかかる。4コースのどれを選んでも同額である。賠償責任の自己負担額は1,000円。保険料の出し方はパンフレットに式で書かれている。「(世帯数×費用損害以外の保険料+費用損害保険料)×(1-世帯数による保険料割引率)=保険料」。円単位を四捨五入して10円単位とし、計算結果が1,000円を下回る契約はできない。

世帯数による割引もある。200世帯以上で5%、500世帯以上で10%、1,000世帯以上で15%、2,000世帯以上で20%。加えて確定精算の定めがあり、保険期間終了時の世帯数が契約締結時より5%を超えて増減した場合は、差額の2分の1を精算する。転出入で世帯数が動く町では、翌年の請求額が動くということである。

世帯数で割り戻すと年78円から715円 ── 定額8,650円は小さい町ほど重い

数字を見たら1単位あたりに割り戻す。不動産業をしていると身につく癖で、私はこの保険料も同じように扱った。同じAコース(賠償2,000万円)で契約したとき、1世帯あたりの年額が磐田市内の実際の世帯数でどう動くかを計算する。分母は当サイトが既に数えた磐田の実数を使った。

加入単位世帯数割引率年間保険料1世帯あたり
見付・清水町(市内で最小規模の町)14世帯0%10,010円715円
豊岡地区の1社あたり平均177世帯0%25,820円146円
磐田市の1自治会あたり平均241世帯5%30,430円126円
市内146社の1社あたり平均496世帯5%53,920円109円
掛塚地区(掛塚まつり)1,331世帯15%117,090円88円
見付天神裸祭の28町合計10,104世帯20%790,990円78円

同じ補償を買っているのに、1世帯あたりの負担は78円から715円まで9.2倍に開く。原因は定額の8,650円である。14世帯の町では、保険料10,010円のうち8,650円、つまり86.4%が世帯数と無関係な部分で占められている。10,104世帯なら8,650円は総額の1.1%にすぎない。「1世帯97円」という単価は、およそ200世帯を超える自治会でなければ近づけない数字である。

分母の出どころを書いておく。磐田市の世帯数72,421世帯(2026年7月31日現在)と自治会の数から出した1自治会あたり241世帯は「磐田市72,421世帯 祭り当番が回る周期を数える」で計算した。裸祭の28町10,104世帯は「見付天神裸祭2026は9月19日 当番が出す時間と現金」で町別に足し合わせた数字で、清水町14世帯もその内訳にある。掛塚の1,331世帯は磐田市「町別人口表(令和8年7月末現在)」による。146社は当サイトが登録している磐田市内の神社数である。

コースを上げるとどうなるかも見ておく。14世帯の町がBコース(賠償3,000万円)にすると1世帯あたり782円、Cコース(5,000万円)で871円、Dコース(1億円)で1,073円になる。屋台が倒れて見物人にけがをさせたときの賠償額は、14世帯の町でも1,903世帯の町でも変わらない。必要な補償額は世帯数と無関係なのに、保険料は世帯数に比例する。小さい町ほど、同じ安心を買うのに高い単価を払うことになる。

秋の例大祭で払われない事故 ── 熱中症と、風だけの中止

この保険が払わない場合も、パンフレットに具体名で書かれている。傷害の補償は「急激かつ偶然な外来の事故」によるけがが対象で、該当しない例が列挙されている。日焼け、熱中症、低温やけど、しもやけ、くつずれ、アレルギー性皮膚炎、疲労骨折、腱鞘炎、慢性の関節炎、肩凝り、慢性疲労・筋肉痛。9月から10月の例大祭で屋台を曳く体力仕事の最中に、いちばん起きそうな不調が、この一覧の2番目に入っている。

保険で拾えない以上、巡行と準備の側で何を止め、誰を休ませるかを先に決める必要がある。2026年の警戒情報が10月21日まで運用されることと、秋祭りで減らせる作業は「秋祭りの熱中症対策 2026年は10月21日まで」に整理した。

中止費用のほうにも条件がある。パンフレットの記述はこうである。「開催地における降水※によって、屋外で行う自治会活動・行事が、中止または延期となった場合」に、自治会が被った費用の損害の70%を支払う(費用損害保険金額50万円が限度)。注記では「降水とは、雨、あられ、雪など降水量として測定されるものをいいます」と定義している。対象になる費用は4つ。仕出弁当等の代金・交通費・宿泊費のキャンセル料、運動場や屋台やテントなどの会場使用料、やぐらや舞台などの仮施設工事費、印刷済のポスターや案内状の印刷費である。

ここに実務上のずれがある。支払いの引き金は「降水」であって「強風」ではない。台風が近づいて風速を理由に前日中止を決め、その日に雨が降らなかった場合、この費用損害の条件を満たすかは読み取れない。さらに免責の欄には、費用損害・傷害ともに地震・噴火・津波が挙がり、賠償責任には地震・噴火・洪水・津波などの天災が挙がっている。9月の台風と境内の危険木の話は「境内の危険木と台風 9月の上陸数1.0個と伐採費20万円」に書いたが、風で倒れた木が人に当たった場合の賠償が、この保険でどこまで拾えるのかは条件次第である。

だから中止基準の書き方を変えたほうがいい、と私は考える。「暴風警報が出たら中止」だけでなく、「降水量◯ミリ以上、または降水が続く見込みのとき」という降水を軸にした一文を並べて書いておく。保険の支払い条件と、祭組が使う判断基準の言葉を揃えておくという、それだけの話である。揃っていないと、中止を決めた根拠と請求の根拠が別々になる。

対象になるのは「自治会が企画・立案した行事」 ── 良い点4つと注文2つ

神社の祭りがこの保険の対象になるかどうかは、行事の中身ではなく、誰が企画したかの書類で決まる。パンフレットは対象となる自治会を「住民同士の親睦および生活環境の改善等を図ることを目的に住民により組織された『町内会・団地自治会』等の地域団体」と定義し、「地域の住民の全員が加入対象となる自治会組織に限る」と条件をつけている。商店会・PTA・婦人会・子供会など、一部の住民のために組織された団体は対象外と明記されている。

対象となる自治会活動の要件は3つ重なっている。企画・立案を自治会が行うか、企画・立案に自治会が参画していること。企画・立案とは日時、場所、スケジュール、参加者の範囲等の具体的な取り決めをいうこと。そして「当該活動の実施・参加について、自治会の役員会や総会で決議され、その内容が行事予定表(計画表)または議事録により客観的に確認されるものに限ります」。祭りが氏子会や祭典委員会の中だけで決まっていて、自治会の議事録に一行も出てこない場合、書類の上では自治会活動につながらない。氏子費と自治会費は別の金であるという整理は「氏子費と自治会費の違い 一括徴収を退けた2002年判決」に書いた。金の流れを分けたなら、行事の決議のほうは残しておく必要がある。

比べる相手 ── 磐田市社会福祉協議会のボランティア活動保険は1人年350円

磐田市内でもう1つ比べられるのが、磐田市社会福祉協議会の「ボランティア活動保険」である。年間保険料は基本プランが1人350円、天災・地震補償プランが1人500円。賠償責任保険金は対人・対物共通で5億円が限度額、死亡保険金1,040万円、入院保険金日額6,500円、通院保険金日額4,000円である(磐田市社会福祉協議会「ボランティア保険」/2026年8月27日確認)。自治会活動保険のAコース2,000万円と並べると、賠償の限度額は25倍になる。

ところが、この保険は祭礼には使えない。対象となる活動は「日本国内における『自発的な思想により他人や社会に貢献する無償のボランティア活動』」で、社会福祉協議会に届け出されたものに限られる。そして対象とならない活動の欄には「PTA、自治会、老人会などの組織や団体構成員の親睦のための活動」が明記されている。祭りはその町の人が自分たちのために出すものだから、ここで外れる。補償期間は4月1日から3月31日までで、年度ごとの手続きが要り、自動更新ではない。事故発生から30日を過ぎた報告は対象にならない。窓口は社協地域福祉課の地域福祉グループ(電話0538-37-9617)である。

2つを並べると、金額の差の意味が変わる。1人350円で5億円の保険と、1世帯97円に定額8,650円を足して2,000万円の保険。安いほうが手厚いのに、祭りでは使えない。使える保険と使えない保険を分けているのは、補償の中身ではなく、その行事が誰のためのものかという線引きである。

この商品の良い点と、注文したい点

この商品の良い点を先に4つ数える。第一に、保険料の計算式を割引率まで含めてパンフレットに開示している。第二に、支払われない場合を「熱中症」「くつずれ」のような具体名で列挙している。第三に、賠償責任の支払限度額を2,000万円から1億円まで4段階に分け、町が自分の身の丈で選べるようにしている。第四に、招待客や役員の親族が対象になる傷害見舞費用を別枠で置き、8日以上の入院などで4千円から10万円を支払う形にしている。祭りに外から来る人が必ずいる行事の性格に合っている。

その上で、氏子の一人として注文したい点が2つある。1つ、費用損害の保険料8,650円が定額であることの重みが、パンフレットのどこにも書かれていない。単価97円は大きく刷られているのに、14世帯の町では1世帯715円になるという事実は、自分で式に入れないと出てこない。小さい町ほど、その計算をする人手が足りない。2つ、中止費用の引き金が「降水」に限られる点が、キャッチコピーの「雨になっても安心!」の陰に隠れている。風で中止する祭りは現実にある。

今の人数で回すために減らせるもの ── 年間行事予定表に1行足す

今の人数で回すために1つだけ減らすなら、私は「行事のたびに決議と議事録を作り直すこと」を挙げる。この保険が求めているのは、行事予定表(計画表)または議事録による客観的な確認である。ならば、年度初めの総会で年間行事予定表を1枚決議し、そこに祭礼を「10月第3土曜・日曜 例大祭(屋台巡行を含む)」の形で1行書いておけば足りる。行事ごとに起案し、そのつど役員会を開き、そのつど議事録を起こす手間は要らなくなる。

ここから先は、私が窓口で見た一場面ではなく、不動産業をしている者としての考えとして書く。体験としての持ち駒がないので、意見であることを明示しておく。保険の請求で詰まるのは、事故そのものより先に「その行事が誰の行事だったか」を示す紙である。土地の売買でも同じことが起きる。境界の位置より、境界を確認した日の立会証明が出てこないほうが止まる。祭りの保険で本当に足りていないのは、金ではなく紙のほうだと私は見ている。

腑に落ちていないことも書く。このパンフレットの取扱代理店は神戸市西区の株式会社ジェイエイアクトで、引受保険会社の窓口は共栄火災海上保険の神戸支店である。同じ商品なら料率は全国同じはずだが、私はそれを確認できていない。磐田で同じ97円・8,650円で入れるかどうかは未確認のまま残す。だから「磐田の自治会は年10,010円で入れる」とは書かない。地元の代理店に見積もりを取ってから判断してほしい。

今日できる確認を3つ挙げる。第一に、自分の自治会がすでに何らかの行事保険に入っているか。二重に入っている町も、一度も入っていない町もある。第二に、2026年度(令和8年度)の総会資料に祭礼が行事として書かれているか。書かれていなければ、次の役員会で1行足す。第三に、祭りの中止基準が文章で残っているか。口伝えの「雨がひどければ中止」では、保険の条件とも、翌年の当番とも噛み合わない。祭りを外から見る側と出す側で前提がどれだけ違うかは「祭礼を見学するとき ── 祭りは氏子の行事であるという前提」に整理してある。

氏子の一人として、商売の目で見るとこうなる。年10,010円という保険料は、祭りを1回出す費用としては安い。安いから議題にならず、議題にならないから14世帯の町が1世帯715円を払っていることに誰も気づかない。伝統だから続けるべきだとも、もう畳むべきだとも、私は言わない。書いたのは、97円という単価の裏で定額8,650円がどう効いているか、その一点だけである。

よくある確認

祭りで屋台が倒れて見物人にけがをさせたら、自治会活動保険で払われますか。

自治会が所有・使用・管理する施設やその行事の遂行に起因する偶然な事故で法律上の賠償責任を負った場合が対象です。支払限度額は身体賠償・財物賠償共通でAコース2,000万円からDコース1億円まで4段階、自己負担額は1,000円です。ただし地震・噴火・洪水・津波などの天災に起因する賠償責任は免責と明記されています。

雨で祭りが中止になったら、弁当のキャンセル料は出ますか。

開催地における降水で屋外行事が中止または延期になった場合、費用の損害の70%が支払われます。費用損害保険金額50万円が限度です。対象は仕出弁当等のキャンセル料、会場や屋台やテントの使用料、やぐら等の仮施設工事費、印刷済のポスター代の4つ。降水は雨・あられ・雪など降水量として測定されるものと定義されています。

神社の祭りをこの保険の対象にするには、何が要りますか。

自治会が企画・立案を行うか、企画・立案に参画していることが要件です。さらに、その行事の実施について自治会の役員会や総会で決議され、内容が行事予定表(計画表)または議事録で客観的に確認できるものに限られます。祭りが氏子会や祭典委員会の中だけで決まっている場合は、書類の上で自治会活動につながりません。

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出典・確認先

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と、氏子総代や神社庁の窓口にご確認ください。本記事は一般的な情報であり、特定の神社・家・土地についての判断ではありません。

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この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。氏神や祭りの担い手の話は、家や土地をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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