大石浩之の氏神ノート防災氏子境内磐田市

磐田市の指定避難所43施設に神社はゼロ

公開 2026-08-29/文:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

記事内容をもとに生成したイメージ:磐田市の指定避難所43施設に神社はゼロ
記事内容をもとに生成したイメージです。実在の場所・人物を撮影したものではありません。

地震のとき、うちの神社の境内は避難所になるんでしょうか

磐田市の指定避難所は43施設で、神社と寺院は0件です(磐田市指定避難所一覧表・令和8年4月1日現在)。43のうち31は小中学校と旧校舎で、廃校3校も数に入っています。指定が無くても境内には人が来ます。鍵を誰が持つか、開けない条件は何かを、台風の前に紙1枚で決めておいてください。

磐田市の指定避難所は43施設 ── 31が学校、神社と寺院は0件

磐田市が指定避難所として公表している施設は43である(磐田市「磐田市指定避難所一覧表」令和8年4月1日現在)。43のうち31が学校で、小学校18、中学校8、小中一体校2、廃校になった旧小学校3という内訳になる。残りは交流センター4、体育館と屋内スポーツ施設3、会館2、その他3である。神社と寺院は0件だった。

種別施設数43施設に占める割合
小学校18施設41.9%
中学校8施設18.6%
小中一体校(向陽学府・ながふじ学府)2施設4.7%
旧小学校(旧向笠・旧大藤・旧岩田)3施設7.0%
交流センター4施設9.3%
体育館・屋内スポーツ施設3施設7.0%
会館(福田健康福祉会館・豊岡南部会館)2施設4.7%
その他(ワークピア磐田・於保農村婦人の家・アミューズ豊田)3施設7.0%
神社・寺院0施設0.0%

先に、この一覧表の良いところを数えておく。3つある。①施設名と所在地に加えて、避難対象の地区名が大字と組の単位まで書き込まれている。福田地区なら「9の1番組」「14番北組」まで、豊岡地区なら「上神増・社山・神増・惣兵衛」まで並ぶ。②電話番号が施設ごとに載っている。③廃校になった3校には「避難所開設時のみ電話可能」と注記があり、平時はつながらないことが先に分かる。当番表を作る側から見ると、どこの誰がどの施設へ行くのかを1枚で照合できる作りになっている。

磐田市は、この一覧の使い方も書いている。

がけ崩れや延焼の恐れがある場合、地震・風水害及び火災時に家屋が被害を受け居住不能の場合は、自主防災会(避難誘導班)の指示に従い、指定の避難所へ避難してください。

数を自分の分母に割り戻す。磐田市の人口は163,224人、世帯数は72,421世帯である(磐田市「磐田市の人口 令和8年度」令和8年7月末現在)。43施設で割ると、1施設あたり1,684世帯・3,796人になる。世帯数の分母の取り方は「磐田市72,421世帯 祭り当番が回る周期を数える」に書いた。いっぽう静岡県神社庁の一覧に載る磐田市の神社は146社(2026年8月確認)。神社の数は指定避難所の3.4倍で、1社あたりの世帯数に直せば約496世帯である。

意外だったのは、廃校の扱いのほうだった。旧向笠小学校・旧大藤小学校・旧岩田小学校は、学校としては閉じている。それでも指定避難所としては43に数えられている。児童が通わなくなった校舎が残り、氏子が毎月手を入れている境内は1社も入っていない。この差は、建物の性格の違いから来ている。

国は2025年6月に「宗教施設の活用を検討して」と市町村へ依頼している

内閣府(防災担当)は2025年(令和7年)6月20日付で、「宗教法人との災害時支援協定や避難所としての宗教施設等の活用の検討について(依頼)」という事務連絡を出している。文化庁がその写しを宗教法人向けのページに掲載している。記書きの2項は、市町村に対してこう書く。

各市町村においては、想定避難者数に対応するように避難所を確保いただく中で、必要に応じて、事前に宗教法人に相談し、当該宗教施設等を活用することを検討すること。

文化庁も2025年(令和7年)12月3日付で、宗教法人の側へ事務連絡を出している。「宗教法人等においても、災害時に宗教施設を避難所として被災者に開放したり、非常用の食料を被災者に提供するなど、行政機関と協力して対応している事例が認められる」という一文がある。国は、市町村と宗教法人の両側に声をかけている。

国の手引きには、もっと直接的な行がある。内閣府(防災担当)の「避難所運営ガイドライン」(令和6年12月改定)は、避難所チェックリストの対策項目3に次の一行を置いている。

3-2 お寺、神社、教会等の宗教施設の利用を検討する

全国では、すでに数がある。大阪大学の稲場圭信・川端亮による全国1,741市区町村の調査(2019年12月から2020年2月に実施、有効回答1,123自治体)では、宗教施設と災害協定を結んでいる自治体が121、回答した自治体の10.8%だった。収容避難所として499施設、一時避難所として1,566施設、合わせて2,065の宗教施設が指定避難所になっている。検討していない理由の1位は「現在の避難所で被災想定人数を収容可能」で30.8%だった。寺社を使う自治体は例外ではないが、多数派でもない。

磐田市の一覧表の基準日は2026年4月1日で、内閣府の依頼から9か月あとにあたる。その一覧に神社と寺院は入っていない。切迫した危険から逃げ込む先である指定緊急避難場所の一覧(磐田市・2026年5月27日更新)にも、神社は入っていない。理由は公表資料に書かれていないので、私には断定できない。相談があったのか、なかったのか、断られたのかも分からない。ここは未確認のまま残す。

そのうえで、一事業者として注文を1つだけ書く。神社を指定避難所に加えてほしい、という話ではない。指定されていない場所へ人が来たとき、市へどう連絡すればよいのか、市の備蓄と運営がどこまで届くのかを、市の側から1行で示してほしい。氏子と総代が雨のなかで考えるより、書いてあるほうが早い。相談の入口が国の事務連絡で開いた以上、断られる場合の答えも含めて、先に見えているほうがいい。

用語も分けておく。内閣府の「指定緊急避難場所の指定に関する手引き」(令和8年1月改定)は、指定緊急避難場所を「居住者等が災害から命を守るために緊急的に避難する施設又は場所」、指定避難所を「避難した居住者等が災害の危険がなくなるまで一定期間滞在し、又は災害により自宅へ戻れなくなった居住者等が一時的に滞在する施設」と説明する。逃げ込む先と、泊まる場所は別物である。今回数えた43は後者、つまり滞在する施設のほうである。

指定されなくても、境内には人が来る ── 氏子と総代がすでに払っているもの

境内は、指定避難所ではない。それでも人は来る。神社の多くは大字ごとに1社あり、鳥居は道に面していて、24時間だれでも入れる。指定避難所が1施設あたり1,684世帯を受け持つ市で、歩いて数分の高台に社があれば、そこへ足が向く人がいるのは自然である。

この前提で、氏子と総代がすでに払っているものを内訳で数える。3つに分かれる。

時間。台風の前後の見回りが1回あたり半日。幟と灯籠の片づけ、賽銭箱の移動、社務所の戸締まりが加わる。年に台風が2回来れば、それだけで2日が消える。9月の台風上陸数が平年値1.0個で年間最多だという数字は「境内の危険木と台風 9月の上陸数1.0個と補助の20万円」に書いた。秋の大祭の準備と、風で枝が折れる季節は同じ月にある。

現金。危険木の伐採は工事費40万円で市の補助が上限20万円、残りは神社の負担になる。屋根と雨樋の修繕、境内灯の電気代も氏子費から出る。人がけがをしたときの賠償を保険で拾えるかどうかは、加入している保険の種類で変わる。1世帯97円の自治会活動保険と、年715円の行事保険の違いは「祭りの保険を比べる 1世帯97円と年715円」に整理した。

体力。草刈り、落ち葉の掃き出し、玉垣まわりの手入れ。高所の作業は代われる人が限られる。誰が社を保ってきたのかは「境内の清掃と奉仕 ── 誰が社を保ってきたのか」にまとめてある。

ここから先は、私が現場で見た一場面ではない。災害時に境内を開けた総代から直接話を聞いたことは私には無いので、不動産業をしている者としての意見として書く。私は空き家の管理を預かるとき、まず鍵を何本持つか、誰と誰が持つかを決める。鍵の所在が決まっていない建物は、非常時に必ず止まるからだ。神社の社務所も同じ性格の建物だと私は考えている。信仰の場であることと、鍵のかかった建物であることは、両立する。

今の人数で減らせること ── 「開けるかどうか」を毎回相談しない

今の人数で回すために減らせるものを1つ挙げるなら、私は「開けるかどうかを、そのつど相談する時間」を選ぶ。台風が近づくたびに総代へ電話が回り、宮司へ確認し、区長へ折り返す。この往復は、決めごとを紙1枚にしておけば起きない。

紙に書くのは4項目でいい。①社務所と拝殿の鍵を誰が持つか。名前を2人以上書く。②開けない条件を先に書く。社殿が傾いている、倒木がある、夜間で足元が見えない、この3つのどれかなら開けない、という書き方でよい。③最寄りの指定避難所の名前と、そこまでの距離。④境内には水道・電気・トイレ・毛布の備えが無いことを、そのまま書く。

紙に書いた後は、実際に誰がどの順で動くかを一度だけ試す。3人・15分で接続部分を確かめる神社の防災訓練のやり方を別の記事にまとめた。

④を書くのを嫌がる気持ちは分かる。それでも書いたほうがいい。備蓄がある場所と無い場所を混ぜてしまうと、来た人が朝まで動かなくなる。指定避難所は市の備蓄と運営の対象で、境内はその外側にある。この線引きを紙の上で先に見せておけば、雨のなかで玄関先の押し問答をしなくて済む。

市と協定を結ぶという道も、制度としては閉じていない。内閣府は市町村に相談を促し、文化庁は宗教法人の側に事例を示している。ただし神社の側から見れば、総代会の決議、責任の範囲、保険の適用、費用の出どころを整理してからの話になる。境内地が宗教法人名義でない社もある。名義の話は「境内地は国庫帰属できない 帰属3,008件と却下の壁」に書いた。

迷っていることも書いておく。市が宗教施設を指定避難所に加えるべきかどうか、私には決めきれない。信仰の場に公の役割を持ち込む線引きは、私の商売の外にある。伝統だから続けるべきとも、もうやめるべきとも言うつもりはない。書けるのは、43という施設数と146という社の数、そのあいだに落ちる負担がどこへ乗るか、それだけである。

今日できる確認 ── 最寄りの指定避難所を一覧で引く

今日できることは1つで、磐田市の指定避難所一覧を開き、自分の地区名を探すことである。一覧は避難対象の地区を大字と組の単位で書いているので、自分の名字ではなく自分の住所で引ける。そこに書かれた施設名が、氏子の家族が向かう先になる。社から何メートル離れているかを地図で測っておけば、境内に来た人へ案内する言葉が1行で済む。

もう1つ、総会までに数えておくとよいことがある。社務所の鍵を今、何人が持っているかである。宮司が兼務で市外に住む社では、鍵の持ち主が地区にいないことがある。氏子の減少が土地と家の移動から起きている以上、鍵の所在も同じ速さで動いている。

結論を今日出す必要はない。境内を開けるかどうかも、市に相談するかどうかも、決めるのは氏子である。ただ、指定避難所が43施設で神社が0件だという事実は、決めない年にも変わらない。

よくある確認

うちの地区の神社は、指定避難所になっていますか。

磐田市の指定避難所は43施設で、神社と寺院は1件も含まれていません(磐田市指定避難所一覧表・令和8年4月1日現在)。43のうち31は小中学校と旧校舎、残りは交流センター4・体育館3・会館2などです。自分の地区がどの施設に割り当てられているかは、市の一覧に大字と組の単位で書かれています。

災害のとき、氏子の判断で境内を開けてよいのですか。

指定避難所ではない場所を開けるかどうかは、その土地と建物を管理する側の判断になります。ただし市の備蓄と運営の対象は指定避難所であり、境内には水道・電気・トイレ・毛布の備えが無いことが普通です。開ける条件と開けない条件、鍵の持ち主を、台風が来る前に紙に書いておくほうが早く済みます。

神社が市と災害時の協定を結ぶことはできますか。

内閣府(防災担当)は2025年6月20日付の事務連絡で、市町村に対し、必要に応じて事前に宗教法人へ相談し宗教施設等の活用を検討するよう求めています。入口は開いています。神社の側では総代会の決議、責任の範囲、保険の適用、費用の出どころの整理が要ります。個別の可否は市の防災担当課へ確認してください。

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出典・確認先

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と、氏子総代や神社庁の窓口にご確認ください。本記事は一般的な情報であり、特定の神社・家・土地についての判断ではありません。

大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)の顔写真

この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。氏神や祭りの担い手の話は、家や土地をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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