大石浩之の氏神ノート氏子空き家相続統計静岡県

空き家の氏子費 静岡県の空き家率16.7%と当番の分母

公開 2026-08-22/文:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

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実家は空き家のままなのですが、氏子費の請求だけ毎年届きます。払わないといけないんでしょうか

一律には決まりません。先に請求書の宛名・内訳・根拠の3つを確かめてください。最高裁は2005年4月26日、規約に退会の制限がない自治会は強制加入団体ではなく会員はいつでも退会できるとした一方、共益費は入居時の約束として退会後も支払義務が残るとしました。団体の会費か実費の分担かで扱いが変わります。

静岡県の空き家率は16.7% ── ただし実家型は全国と同じ5.9%

総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査(住宅及び世帯に関する基本集計、2024年9月25日公表の確報値)によれば、静岡県の総住宅数は177万4千戸、空き家は29万6千戸で、空き家率は16.7%である。全国は総住宅数6,504万7千戸に対し空き家900万2千戸で13.8%。静岡県は全国を2.9ポイント上回る。

ただし、この16.7%をそのまま「実家が空いている県」と読むと外れる。同じ調査は空き家を4つに分けており、賃貸用の空き家、売却用の空き家、二次的住宅(別荘など)、そしてそのどれでもない「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」がある。氏子費の請求が届くような、住む人がいなくなったまま持ち主の手元に残っている家は、最後の類型にあたる。

区分総住宅数空き家数空き家率賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家その率
静岡県177万4千戸29万6千戸16.7%10万5千戸5.9%
全国6,504万7千戸900万2千戸13.8%385万6千戸5.9%

静岡県の「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は10万5千戸、率にして5.9%である。全国も5.9%で、まったく同じである。16.7%と13.8%の2.9ポイントの差は、伊豆や富士山麓の別荘(二次的住宅)と賃貸用の空き家が作っている。県全体の見出しの数字と、氏神の当番表に効く数字は別物だということになる。私は不動産の相談で統計を持ち出すとき、必ずこの分解をしてから話す。分解しないと、話が実際の家から離れていく。

磐田市の目標は「2,000戸未満におさえる」 ── 戸建て1,880戸

磐田市が公表している「磐田市空家等対策計画」は、成果目標のひとつに「戸建て住宅の空き家数」を置いている。現状値は令和2年度の1,880戸、令和8年度の目標値は「2,000戸未満におさえる」である。指標の定義は、住宅・土地統計調査における「その他住宅数(アパートを除く)」と明記されている。計画期間は2022年度(令和4年度)から2026年度(令和8年度)までの5年間で、今年度がその最終年度にあたる。

ここは正直に読んでおきたい。目標は「減らす」ではなく「増加を2,000戸未満に抑える」である。1,880戸から2,000戸まで120戸の幅を見込んでいるということで、市は増えることを前提に線を引いている。私はこれを甘い目標だとは思わない。市内の高齢世帯の数と相続の発生を見ていれば、減る絵を描くほうが実務から離れる。良い点として先に書いておくと、指標の定義に統計の項目名を書き込んでいるので、達成したかどうかを外から検算できる。目標の書き方としては誠実である。

注文をひとつだけ添えるなら、この1,880戸が市内のどこに寄っているかが計画からは読めない。地区別の内訳が出ていれば、氏子の側は自分の社の分母を直接見積もれる。一事業者としては、次の改定でそこを見たい。

1,880戸を、磐田市の72,421世帯(2026年7月31日現在)で割ると2.6%になる。氏子60戸の社なら1.6戸、氏子500戸の社なら約13戸に相当する。ざっくりした割り戻しで、空き家が地区に均等に散っている前提を置いている。当サイトが登録している市内146社で単純に割れば1社あたり約13戸で、同じ率になる。周期の計算式そのものは「磐田市72,421世帯 祭り当番が回る周期を数える」に書いた。

空き家になっても止まらない支払い ── 6つの費目

実家が空き家になっても、支払いは止まらない。相談を受けていて、持ち主の側が一覧にできていないことが多いのがこの部分である。氏子費だけが目立つのは、金額が小さいわりに毎年きちんと請求が来るからだと私は考えている。

  • 固定資産税・都市計画税。人が住まなくても課税は続く。住宅用地の特例が外れると土地の税額が上がる場合がある。
  • 火災保険。空き家は住宅物件ではなく一般物件として扱われることがあり、条件が変わる。
  • 水道・電気の基本料金。止めると草刈りや換気のときに困るので、残す家が多い。
  • 自治会費。地区によっては空き家でも据え置き、または減額で続く。
  • 氏子費・神社費。自治会費に含まれている場合と、別建ての場合がある。
  • 墓地管理料。氏子費とは別の請求で、寺院墓地か共同墓地かで宛先が変わる。

時間の側も数えておく。年に数回の帰省、郵便物の整理、総会や当番の書類への返信。市外に住んでいると、この移動そのものが半日から1日単位で消える。体力の側、つまり草刈りと庭木の手入れは、遠方に住んでいると外注に置き換わる。体力の負担が現金の負担に変わるだけで、消えるわけではない。実家をたたむ段取りそのものは「実家をたたむときの作法 ── 神棚じまい・氏神への挨拶」に別に整理してある。家を売って市外へ移り、氏子から抜ける側に回る場合の、誰にいつ伝えるかの順序は「引っ越しで氏子を抜ける手順 静岡県転出超過7,919人」に書いた。

請求書を分解する ── 会費か実費か、最高裁が引いた線

氏子費を払う義務があるかどうかは、一律には決まらない。手がかりになる判断が2つある。どちらも自治会をめぐるもので、神社の運営の当否を判断したものではない。

ひとつは最高裁判所第三小法廷の平成17年(2005年)4月26日判決(平成16年(受)第1742号、自治会費等請求事件、集民216号639頁)である。県営住宅の入居者で構成される自治会について、この自治会は権利能力のない社団であり、いわゆる強制加入団体ではなく、規約に会員の退会を制限する規定がないのだから、会員はいつでも一方的な意思表示で退会できると判断した。一方で、同じ判決は共益費については、入居に際して支払うことを約したものだとして、退会の有効・無効にかかわらず支払義務は消滅しないとしている。判決文は不動産適正取引推進機構が裁判所ホームページをもとに公開している資料で読める。

ここで引かれた線が、氏子費を考えるときにそのまま効く。団体の会員であることに対する会費と、実際に生じた費用の分担とは、別に扱われた。氏子費が社の維持実費の分担として集められているのか、団体の会費として集められているのかで、話の立て方が変わる。

もうひとつは佐賀地方裁判所の平成14年(2002年)4月12日判決(平成11年(ワ)第392号、地位確認等請求)である。国立国会図書館のレファレンス協同データベースの記載によれば、自治会費に含まれる特定宗教費(神社関係費)の支払を拒んだ会員を自治会員として扱わなかった自治会の行為は、神社神道を信仰しない会員の信教の自由を侵害し違法とされ、会員の地位確認請求が認められた。慰謝料請求は棄却されている。これは特定の自治会についての地裁の判断であり、他の地区の取り決めを一般的に決めたものではない。この判決が区費のどの費目をどう仕分けたかは「氏子費と自治会費の違い 一括徴収を退けた2002年判決」で、1995年度予算の金額まで下ろして読んだ。

私は氏子費を払うべきかどうかを、ここで断定しない。信仰の当否は当サイトの扱う話ではないし、社ごとの規約と長年の取り決めを、外から一律に評価する立場にもない。書けるのは手順である。請求書の宛名が誰か(登記名義人か、亡くなった前の当主か、相続人の代表か)、金額の内訳が自治会費と氏子費に分かれているか、根拠が規約のどの条文か。この3点を1枚の紙に書き出すところまでは、今日できる。税務や相続の個別判断は、そこから先の話として専門家に確認してほしい。

総代の側で1つ減らせること ── 空き家の扱いを規約に1行

減らせるものを、氏子と総代の側から1つ挙げる。空き家になった家の扱いを、規約か申し合わせに1行だけ先に書いておくことである。休会にするのか、据え置くのか、実費分だけ残すのか、免除するのか。どれを選ぶかは氏子で決める事柄で、私が決める話ではない。決めてほしいのは中身ではなく、「先に決めておく」という形のほうである。

今の状態では、空き家が1軒出るたびに総代が個別に判断している。集金に何度も足を運び、届かない請求書を追い、名義人が亡くなっていれば相続人を探す。これは総代の時間で払われている負担で、当番の設営や草刈りと違って、誰の目にも見えない。空き家が市内2.6%の水準で増えていく前提に立つなら、この事務は毎年少しずつ重くなる。1行あれば、判断のたびに集まる必要がなくなる。

ただ、私はここでも迷っている。免除を先に決めれば、住み続けて当番も出している家との間に不公平が出る。据え置きにすれば、市外の相続人にとっては何のために払っているのか分からない支出が残る。どちらにも言い分がある。氏子の数が減っていく流れそのものは「神道系の宗教法人は1年で100減 氏子の減り方とのずれ」で法人数と信者数を分けて読んだが、そこでも法人の数と実際の担い手の数はずれていた。数字だけでは決まらない。

今日結論を出す必要はない。実家を売るか残すかも、氏子を続けるか抜けるかも、今日決めなくていい。ただ、請求書の宛名と内訳と根拠の3つだけは、次の請求が来る前に確かめておくと効く。請求書の宛名が前の当主のままなら、氏子費より先に土地の名義のほうに期限が来ている可能性がある。逆に、その家がまだ当番を出している側なら、出ていくものの実物は「見付天神裸祭2026は9月19日 当番が出す時間と現金」で数えたとおり、8日間と6点の装束である。払う側と抜ける側の両方を見てから決めればいい。氏子と実家の関係を古い記録までさかのぼった整理は「研究ノート:氏子と実家 ── 家を離れても縁は続くのか」にある。

よくある確認

空き家になった実家の氏子費は、払わなければいけませんか。

一律には決まりません。氏子費が自治会費に含まれているのか、神社費として別建てかで扱いが変わります。最高裁平成17年4月26日判決は、規約に退会を制限する定めのない自治会は強制加入団体ではなく会員はいつでも退会できるとした一方、共益費は退会後も支払義務が残るとしました。まず請求書の宛名と内訳を確認してください。

静岡県の空き家率はどのくらいですか。

総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査(確報集計)では、静岡県の総住宅数177万4千戸に対し空き家は29万6千戸で、空き家率は16.7%です。全国の13.8%を2.9ポイント上回ります。ただし賃貸用・売却用と別荘などを除いた空き家の率は5.9%で、全国の5.9%と同じです。

磐田市に戸建ての空き家はどれくらいありますか。

磐田市空家等対策計画は、戸建て住宅の空き家数の現状値を令和2年度の1,880戸としています。指標の定義は住宅・土地統計調査における「その他住宅数(アパートを除く)」です。令和8年度の目標値は「2,000戸未満におさえる」で、減らす目標ではなく増加を抑える形で置かれています。

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出典・確認先

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と、氏子総代や神社庁の窓口にご確認ください。本記事は一般的な情報であり、特定の神社・家・土地についての判断ではありません。

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この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。氏神や祭りの担い手の話は、家や土地をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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