大石浩之の氏神ノート宗教法人総代会計

宗教法人の財産目録と閲覧請求 25条の6書類と過料10万円

公開 2026-08-30/文:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

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記事内容をもとに生成したイメージです。実在の場所・人物を撮影したものではありません。

総代を引き受けたのですが、社のお金の帳簿はどこまで見せてもらえるのでしょうか

宗教法人法第25条第2項の6種の書類は、事務所に常に備える義務があります。第3項により、氏子や総代も「信者その他の利害関係人」として閲覧を請求できます。文化庁が挙げる正当な利益の例の筆頭が神社の氏子です。ただし対象は6種の書類そのもので、領収書や預金通帳は含まれません。

宗教法人法第25条 ── 神社の事務所に「常に」備える6種の書類

宗教法人には、事務所に書類と帳簿を備える義務がある。根拠は宗教法人法第25条で、条の見出しは「財産目録等の作成、備付け、閲覧及び提出」である。第1項は、設立の時に財産目録を、毎会計年度終了後3月以内に財産目録及び収支計算書を作成せよと定める。第2項は、事務所に「常に」備えるべき書類と帳簿を6つの号に分けて挙げている(e-Gov法令検索・宗教法人法、2026年8月30日確認)。

書類・帳簿(条文の表記)所轄庁への写しの提出
規則及び認証書不要
役員名簿必要
財産目録及び収支計算書並びに貸借対照表を作成している場合には貸借対照表必要
境内建物(財産目録に記載されているものを除く。)に関する書類必要
責任役員その他規則で定める機関の議事に関する書類及び事務処理簿不要
第6条の規定による事業を行う場合には、その事業に関する書類必要

文化庁は「あなたの宗教法人は書類、帳簿類を備えていますか」というページで、この6号を実務の形に割り直し、9つの項目で説明している。第五号は「責任役員会等の議事録」と「事務処理簿」に分けられ、議事録については責任役員会以外の規則で定める機関、たとえば総代会の会議内容も同様だと書かれている。総代会の記録は、社の親切で残すものではなく、備えるべき書類の側にある。

収支計算書だけは免除の道がある。宗教法人法附則第23項は、公益事業以外の事業を行わない法人で、一会計年度の収入の額が文部科学大臣の定める額の範囲内にあるときは、当分の間、収支計算書を作成しないことができると定める。その額を文化庁は8,000万円以内としている。ただし附則第25項により、実際に作成しているときは事務所に備えなければならない。

8,000万円を氏子の側の数字に割り戻してみる。氏子300戸の社なら、1戸あたり年26万6千円の収入があって初めて届く額である。佐賀地方裁判所の2002年の判決で争われた氏子費は1戸あたり年150円だった。桁が4つ違う。磐田の村社の規模で収支計算書の作成義務が生じる社は、まず無い。その一方で、財産目録と役員名簿の備付けに収入の下限は置かれていない。年に数万円しか動かない社でも、法人であれば毎年作って置いておく。ここに例外は無い。氏子費と自治会費を会計としてどう分けるかは「氏子費と自治会費の違い 一括徴収を退けた2002年判決」に書いた。

氏子は閲覧を請求できる ── 文化庁の例示の筆頭が「神社における氏子」

備えた書類を氏子が見せてもらえるかどうかは、宗教法人法第25条第3項に書いてある。条文はこうである。

宗教法人は、信者その他の利害関係人であつて前項の規定により当該宗教法人の事務所に備えられた同項各号に掲げる書類又は帳簿を閲覧することについて正当な利益があり、かつ、その閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があつたときは、これを閲覧させなければならない。

文化庁は「信者その他の利害関係人から事務所備付け書類等の閲覧請求があった場合には」というページで、正当な利益がある者の例を6つ挙げている。筆頭が「宗教法人と継続的な関係を有し,宗教法人の財産基盤の維持形成に貢献している寺院における檀徒や神社における氏子など」である。2番目が「宗教法人の管理運営上の一定の地位が規則等で認められている総代など」で、以下は宗教教師、債権者、保証人、包括・被包括関係にある宗教団体と続く。あくまで例示だという断り書きが付いている(2026年8月30日確認)。

この仕組みには評価できる点がある。同じページは、閲覧させる目的を「宗教法人の管理運営の透明性が高められ、そのより適正な運営が行なわれること」と書いている。氏子と総代が例示の1番目と2番目に置かれているのも、金を出している側を後回しにしていない並びだ。制度の設計としては筋が通っている。

請求できる範囲には線が引かれている。同じページの一文を引く。

請求の対象となるのは,宗教法人法第25条第2項の書類及び帳簿です。これらの作成の元となった帳簿等は対象ではありません。

預金通帳、領収書、現金出納の伝票は対象外になる。見られるのは財産目録と収支計算書までであって、その1行がどの領収書から来たかまでは遡れない。財産目録に載る宝物や境内地を動かすときに第23条の公告が要る話は「宗教法人の土地売却は公告1か月 神社の境内地を動かす手順」にまとめてある。

閲覧を断っても過料にはならない ── 第88条が罰するのは別のこと

宗教法人法の罰則は第88条にある。10万円以下の過料で、科される相手は宗教法人の代表役員、その代務者、仮代表役員又は清算人である。第25条に関わるのは2つの号だ。第4号が第1項・第2項に違反して書類や帳簿の作成・備付けを怠ったとき、および同項各号の書類や帳簿に虚偽の記載をしたとき。第5号が第4項の写しの提出を怠ったときである。

この列に第3項が入っていない。閲覧請求を断ったこと自体には、過料の定めが無い。文化庁は「宗教法人は、個別の事例に応じ、その閲覧につき正当な利益があるか、不当な目的によるものでないか等を考慮した上で、請求に応じるかどうかの判断をしなければなりません」と書いている。判断するのは、請求される側の法人である。

ここで一つ注文したいことがある。総代が帳簿を見たいと言い、断るかどうかを決めるのが代表役員である宮司や前任の総代だとすると、揉めた瞬間に条文は効かなくなる。実際に困る場面ほど、この一次判断権の置き方が効いてくる。

ここから先は、実家じまいの相談で書類の所在を追ってきた一事業者としての私の考えで、体験ストックに当たる場面が無いので実話としては書かない。私が迷っているのは、では誰が判定すればいいのかという先である。外の誰かが正当な利益を判定する形にすればよいとも思わない。第5項が、所轄庁に対して宗教法人の宗教上の特性及び慣習を尊重せよとわざわざ書いているのは、信仰の中身に行政が踏み込まないための線だからだ。透明性と、その線と、どちらも要る。私はまだ、この2つを両立させる型を見たことがない。

総代がすでに払っている負担 ── 現金・時間・体力の内訳

第25条を守るために総代が実際に払うものを、3つに分けて数える。現金の側は小さい。財産目録と役員名簿の用紙代、写しのコピー代、所轄庁へ送る郵送代。規則や認証書を紛失していれば、所轄庁から謄本の交付を受ける実費が乗る。合わせても千円台から数千円で収まる。過料10万円のほうが桁として大きく、氏子300戸の社なら1戸あたり333円にあたる。

時間の側は期限で決まる。第1項の作成が毎会計年度終了後3月以内、第4項の写しの提出が4月以内。決算を締めてから県へ出すまで、実質1か月しかない。4月から3月の会計年度なら7月31日、1月から12月なら4月30日が提出の期限になる(文化庁『宗教法人のための運営ガイドブック』令和5年11月)。前年度と中身が1行も変わらなくても、毎年度出す。

体力の側は、書類を探す時間である。規則の原本がどこにあるか、認証書が誰の家に置いてあるか、前年度の総代会の議事録を誰が書いたか。役員が交代した年に、この3つが同時にわからなくなる。代表役員が代わったときの登記と届出の期限は「宗教法人の代表役員変更登記 期限2週間と過料10万円」にまとめた。

磐田の話をする。当サイトが登録している磐田市の神社は146社で、うち145社が静岡県神社庁の神社紹介に掲載されている。宮司の常駐が確認できたのは中泉の府八幡宮を含む3社で、兼務と確認できたのが3社、残る140社は未確認である(2026年8月30日時点)。ここで注意がいるのは、146社のすべてが宗教法人とは限らないことだ。法人格が無ければ第25条は動かない。名義と器の形の違いは「認可地縁団体と宗教法人 磐田の氏子と土地の3つの形」で3つに分けて比べた。静岡県内にだけ境内建物を備える神社の所轄庁は静岡県知事で、窓口は総務部法務文書課の法人班(静岡市葵区追手町9-6・054-221-3280)である。

今の人数で回すために ── 1冊に6つの仕切りを作る

今の人数で回すために減らせることを1つ挙げる。書類を6つの仕切りに分けた1冊のバインダーにまとめ、第4項の写しを作るときに閲覧用の1部を同時に作ることである。仕切りは第2項の順番どおりでいい。規則及び認証書、役員名簿、財産目録と収支計算書、境内建物に関する書類、議事に関する書類と事務処理簿、事業に関する書類の6つ。県へ出すのは第二号から第四号までと第六号だから、コピー機の前に立つ回数は年に1回で済む。

この形にしておくと、閲覧請求が来たときに探す時間がゼロになる。正当な利益があるかどうかを考える前に、見せられる状態が机の上にあるかで話の温度が変わる。私の商売でいえば、査定を頼まれてから権利証を探し始める家と、封筒1つにまとめてある家の違いに近い。中身が同じでも、決まるまでの日数が違う。

今日、結論を出す必要はない。確かめる順序は3つでいい。①社が宗教法人かどうかを、規則と認証書があるかで確かめる。②第25条第2項の6種類のうち、どれが今どこにあるかを紙に書き出す。③直近の会計年度について、所轄庁へ写しを出した控えが社の書類綴りに残っているかを見る。1つでも欠けていたら、次の総代会の議題に1行足しておけばいい。社の書類と記録をたどる入口は「磐田の神社を自分で調べる方法」にまとめてある。伝統だから続けるべきだとも、やめるべきだとも私は言わない。ただ、6つの仕切りが埋まっているかどうかは、信仰の話とは別に今日確かめられる。個別の判断は、所轄庁である静岡県の法務文書課か、司法書士・税理士に確かめてほしい。

よくある確認

氏子であれば誰でも神社の帳簿を見せてもらえますか。

宗教法人法第25条第3項は、信者その他の利害関係人で、閲覧に正当な利益があり、請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があったときは閲覧させなければならないと定めています。文化庁は正当な利益がある例の筆頭に神社の氏子を挙げていますが、該当するかどうかは個別の事例ごとに法人が判断します。

領収書や預金通帳も閲覧の対象になりますか。

なりません。文化庁は「請求の対象となるのは,宗教法人法第25条第2項の書類及び帳簿です。これらの作成の元となった帳簿等は対象ではありません」と書いています。対象は規則及び認証書、役員名簿、財産目録と収支計算書、境内建物に関する書類、議事に関する書類と事務処理簿、事業に関する書類の6種です。

収支計算書は毎年かならず作らなければいけませんか。

宗教法人法附則第23項により、公益事業以外の事業を行わない法人で一会計年度の収入が8,000万円以内であれば、当分の間、収支計算書を作成しないことができます。財産目録と役員名簿は免除されません。作成した場合は事務所に備え、写しを所轄庁へ提出する必要があります。

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出典・確認先

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と、氏子総代や神社庁の窓口にご確認ください。本記事は一般的な情報であり、特定の神社・家・土地についての判断ではありません。

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この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。氏神や祭りの担い手の話は、家や土地をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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