大石浩之の氏神ノート宮司神職氏子祭礼
宮司の兼務は何社まで 兵庫10.7社と磐田146社
公開 2026-08-30/文:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)
うちの宮司さんは他の神社も持っているそうですが、何社まで見られるものですか
上限を決めた全国共通の基準はありません。兵庫県は宮司1人あたり10.7社、但馬地域は25.4社、最大80社という実例があります(兵庫県神社庁・2022年4月1日時点)。全国は神職1人あたり3.7社です。磐田市の146社に当てると必要な神職は13.6人から39.5人。まず氏神が本務社か兼務社かを確かめてください。
兵庫県は宮司1人あたり10.7社 ── 但馬は25.4社、1人で80社の例もある
宮司が何社まで兼務できるかという上限は、全国共通の基準として置かれていない。実態は「その地域に神社が何社あり、宮司が何人いるか」の割り算で決まる。兵庫県神社庁によると、2022年4月1日時点で兵庫県内の神社は3,814社、宮司は355人だった。1人あたり10.7社になる(神戸新聞2022年5月14日「神職の人手不足が深刻 過疎地の神社、宮司1人で80社担当も 祭りには「助っ人」登場」)。
| 区分 | 神社数 | 宮司数 | 宮司1人あたり |
|---|---|---|---|
| 兵庫県全体(2022年4月1日時点) | 3,814社 | 355人 | 10.7社 |
| 但馬地域(同時点) | 738社 | 29人 | 25.4社 |
| 最多の例(香美町香住区の宮司) | 80社 | 1人 | 80社 |
但馬地域の数字は、記事にそのまま書かれている。
面積で兵庫県の4分の1を占める但馬地域には神社が738社あるが、宮司は29人しかおらず、1人平均25・4社を担当する計算だ。
最多の例は、香美町香住区の金刀比羅神社の宮司である。取材時70歳で、町内と豊岡市に兼務社が80社あった。秋祭りの時期には1日に6社も7社も回り、30分や40分刻みのスケジュールで神事をこなすと記事は書いている。80社を1日1社ずつ回れば80日かかる。祭りが秋の2か月に集まる以上、1日に何社も重ねるしか方法がない。
兼務社という言葉の意味も、この記事が説明している。
後継者がいない宮司が亡くなるなど、宮司が不在になった神社をカバーする「兼務社」を1人で数十社抱えるケースも珍しくない。
助っ人の実例も載っている。2018年10月には生田神社と湊川神社が神職4人を派遣して豊岡市の13社を受け持ち、2019年10月には長田神社と西宮神社も加わって神職7人で24社を受け持った。県内の大きな社が、祭りの日だけ人を出す形である。
全国は神職1人あたり3.7社 ── 磐田市の146社は宮司13.6人分か39.5人分か
全国の分母を先に置く。文化庁『宗教年鑑 令和7年版』(令和6年12月31日現在)によると、神社本庁が包括する神社は78,157社、神社本庁の教師(神職)は20,992人である。割ると神職1人あたり3.7社になる。兵庫県の宮司1人あたり10.7社は、この約2.9倍にあたる。
ただし、この2つは物差しが違う。全国の20,992人には宮司以外の神職(禰宜・権禰宜など)が含まれ、兵庫の355人は宮司だけの数である。3.7社と10.7社の差には、地域差だけでなく数え方の差も混じっている。倍率をそのまま「兵庫は全国の3倍苦しい」と読むことはできない。
静岡県の神社数は2,838社である(文化庁『宗教年鑑 令和7年版』・令和6年12月31日現在)。静岡県神社庁も公式サイトで「県内二千八百余の神社を包括する組織」と書いている。ただし静岡県神社庁の管内神職数・宮司数は公表されていない。静岡県の1人あたり社数を、私は出せない。ここは未確認のまま残す。
そこで、兵庫と全国の2つの物差しを磐田に当ててみる。当サイトが把握している磐田市の神社は146社(静岡県神社庁の掲載145社+掲載外1社)。市の世帯数は72,421世帯である(磐田市「磐田市の人口 令和8年度」令和8年7月末現在)。世帯数の分母の取り方は「磐田市72,421世帯 祭り当番が回る周期を数える」に書いた。
| 当てる物差し | 磐田市146社に必要な人数 | 神職1人が受け持つ世帯数 |
|---|---|---|
| 兵庫県平均(宮司1人10.7社) | 13.6人 | 5,325世帯 |
| 全国平均(神職1人3.7社) | 39.5人 | 1,833世帯 |
| 但馬地域なみ(宮司1人25.4社) | 5.7人 | 12,706世帯 |
13.6人と39.5人では、氏子から見える景色がまるで違う。同じ146社でも、前者なら1人が10社を抱え、後者なら4社弱で済む。この幅がそのまま「例祭に神職を呼べるかどうか」の幅になる。
市内の実数も1つある。静岡県神社庁の掲載で各種御祈祷の案内が出ているのは、矢奈比賣神社(見付)、府八幡宮(中泉)、貴船神社(掛塚)の3社である。146社のうち3社、2.1%にあたる。初穂料の納め方と、依頼できる社の範囲は「のし袋と初穂料の表書き ── 慶事と弔事の書き分け」に整理してある。
大正10年の郡誌でも、神職名があるのは146件中7件だった
意外だったのは、これが新しい話ではないことだった。『静岡県磐田郡誌』(大正10年)が「代表者」欄に神職名を記す社は、市域146件のうち7件にすぎない。4.8%である。しかも、うち3社――諏訪神社(大当所)、日吉山王神社(上野部)、秋葉神社(新開)――は同じ宮司の兼務だった。100年前の磐田で、すでに1人が3社を持っていた。
ここは言い切ってよい。兼務は、氏子が減ったから始まったものではない。神職が常駐しない社のほうが元から多数派で、氏子の減少はその形を支える側の人数を削っただけである。宗教法人としての神社が全国で1年に100件減っている話は「神道系の宗教法人は1年で100減 氏子の減り方とのずれ」に書いた。減っているのは社の数であり、兼務という仕組みそのものは百年前から動いている。
兼務という仕組みの良い点を、先に3つ数えておく。①宮司が不在になった社を別の宮司が引き受けるので、無人の社でも例祭の日に祝詞が上がる。②氏子の側は、1社で神職1人を抱える必要がない。神社の年間支出から人件費が丸ごと外れる。③兵庫の例のように、支部や大きな社が祭りの日だけ人を出す形が実際に動いている。仕組みとして筋は通っている。
そのうえで、一事業者として注文を2つ書く。①兼務社の数と宮司の連絡先を、社頭の掲示か神社庁の一覧で、氏子が自分で確かめられる形にしてほしい。②例祭日の重なりを調整する相談を、各社の総代が個別に電話するのではなく、地区単位でまとめて受ける窓口がほしい。どちらも神社の運営を責める話ではない。探す手間と待つ時間を減らす話である。
兼務の負担は、氏子の側に「待ち時間」として乗る
兼務社の氏子と総代がすでに払っているものを、時間・現金・体力の内訳で数える。宮司が何社を持っているかは、この3つのうち特に時間に効いてくる。
時間。例祭の日程を、宮司の空きに合わせて決める。1社30分から40分刻みで回る秋には、希望日がそのまま通るとは限らない。総代が電話をかけ、折り返しを待ち、区長へ連絡し、氏子へ回覧する。この往復が1回の日程調整で3日から1週間かかる。神事そのものは30分でも、そこへ辿り着くまでの時間は兼務社数に比例して伸びる。
現金。初穂料に加えて、遠方から来てもらう場合の車代が乗る。社殿と境内の維持費は、宮司の有無にかかわらず氏子費から出る。屋根や玉垣の修繕を業者に頼むときの人件費の目安は「神社の修繕費 労務単価25,834円と奉賛金の1戸あたり」に書いた。
体力。神職が来る日の朝までに、境内を整えるのは氏子の仕事である。草刈り、幟立て、拝殿の掃除、直会の支度。兼務社では宮司が滞在するのが1時間程度なので、準備と片づけの比率が本務社より大きくなる。
ここから先は、私が現場で見た一場面ではない。兼務社の宮司から日程の組み方を直接聞いたことは私には無いので、不動産業をしている者としての意見として書く。私は空き家の管理を預かるとき、料金を決める前に移動時間を数えることにしている。現地での作業が30分でも、片道40分かかる家は1件で2時間近くを使う。件数が増えるほど、作業時間より社と社のあいだの距離が効いてくる。80社を1人で回る1日も、同じ形をしていると私は考えている。上限を決めているのは信仰でも制度でもなく、車のハンドルを握っている時間である。
今の人数で減らせること ── 例祭日の調整を毎年ゼロからやり直さない
今の人数で回すために減らせるものを1つ挙げるなら、私は「例祭日を毎年ゼロから相談する時間」を選ぶ。宮司の秋の日程は先に埋まる。埋まってから電話をかけると、空いている日から選ぶことになり、氏子の都合は後回しになる。順番を入れ替えるだけで、待ち時間は減る。
紙に書くのは4項目でいい。①氏神が本務社か兼務社か。宮司の氏名と連絡先、その宮司が何社を兼務しているか。②例祭の希望日を第3希望まで先に決めておく。③神職に来てもらう行事と、氏子だけで行う行事を分けて書く。④宮司が来られない年にどうするかを先に決めておく。総代による献饌だけにする、日にちを1週間ずらす、隣の社と合同にする。どれを選ぶかは氏子が決めることだが、決めてあるかどうかで当日の判断が変わる。
④を先に書くのを縁起でもないと感じる方もいる。それでも書いたほうがいい。80社を持つ宮司がいる県があるという事実は、来られない年が制度上ありうるという意味だからだ。決めていない社は、来られないと分かった日に総代が全員へ電話することになる。
迷っていることも書いておく。社の数そのものを減らすべきかどうか、私には決めきれない。合祀すれば1人の宮司が受け持つ社の数は減る。ただし社が1つ消えると、その大字の祭りの単位も一緒に消える。土地と家の相談を受けている側から見ると、大字の単位が消えることの影響は祭りだけで終わらない。伝統だから続けるべきとも、もうやめるべきとも、私は言わない。
今日できる確認 ── 氏神が本務社か兼務社かを1本の電話で確かめる
今日できることは1つで、自分の氏神の宮司が誰かを確かめることである。静岡県神社庁の「静岡県の神社」で市名から引くと、社名と所在地が出る。そこに宮司名の記載があれば本務社の可能性が高い。記載がなければ、社頭の掲示を見るか、氏子総代か自治会に尋ねる。自分の氏神がどの社かを決める考え方は「氏神と崇敬神社 ── 自分の氏神を知るということ」にまとめてある。
もう1つ、総代が代わる前に数えておくとよいことがある。その宮司が何社を兼務しているかである。10社なのか30社なのかで、例祭の日程をいつ相談すべきかが変わる。氏子の減少が土地と家の移動から起きている以上、宮司の受け持ち社数も同じ方向へ動いている。
結論を今日出す必要はない。合同祭にするかどうかも、日にちをずらすかどうかも、決めるのは氏子である。ただ、宮司の氏名と連絡先と兼務社数の3つだけは、総代の代替わりのたびに口伝えで渡すのをやめて、紙に書いておいたほうがいい。この3行は、どの選択をする年にも必ず効く。
よくある確認
宮司が兼務できる神社の数に上限はありますか。
全国共通の上限は置かれていません。実際の数は地域差が大きく、兵庫県では宮司1人あたり10.7社、但馬地域は25.4社、最多で1人80社という例があります(兵庫県神社庁・2022年4月1日時点)。全国では神社本庁の包括78,157社に神職20,992人で、1人あたり3.7社です。
自分の氏神が兼務社かどうかは、どう調べればよいですか。
静岡県神社庁の「静岡県の神社」で市名から引き、社名と所在地、宮司名の記載を確かめるのが早い方法です。記載がない場合は社頭の掲示を見るか、氏子総代または自治会に尋ねます。磐田市内146社のうち、各種御祈祷の案内が出ているのは3社にとどまります。
兼務社では例祭の日程はどう決まりますか。
宮司の空いている日に合わせて決まるのが実際です。秋祭りが集中する時期は1社30分から40分刻みで回る例もあり、希望日がそのまま通るとは限りません。第3希望まで先に決めておき、宮司が来られない年の代替(献饌のみ、日をずらす、合同祭)も総会の場で決めておくと待ち時間が減ります。
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- 氏神と崇敬神社 ── 自分の氏神を知るということ
- のし袋と初穂料の表書き ── 慶事と弔事の書き分け
- 磐田市72,421世帯 祭り当番が回る周期を数える
- 秋葉神社(新開)── 郡誌で同じ宮司が兼務した三社の一つ
出典・確認先
- 神戸新聞「神職の人手不足が深刻 過疎地の神社、宮司1人で80社担当も 祭りには「助っ人」登場」(2022年5月14日)(2026年8月確認)
- 文化庁『宗教年鑑 令和7年版』(令和6年12月31日現在)(2026年8月確認)
- 静岡県神社庁「静岡県の神社」磐田市(2026年8月確認)
- 静岡県神社庁 公式サイト(県内二千八百余の神社を包括)(2026年8月確認)
- 磐田市「磐田市の人口 令和8年度」(令和8年7月末現在)(2026年8月確認)
- 『静岡県磐田郡誌』(大正10年、磐田郡役所)(2026年8月確認)
制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と、氏子総代や神社庁の窓口にご確認ください。本記事は一般的な情報であり、特定の神社・家・土地についての判断ではありません。