大石浩之の氏神ノート宗教法人消費税会計総代磐田市

宗教法人のインボイス2割特例 期限は2026年9月30日

公開 2026-08-28/文:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

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神社の会計を任されました。初穂料の請求書にインボイスが要ると言われましたが、2割特例は9月で終わりなのでしょうか

神社の収入のうち初穂料・お守り・拝観料は消費税の対象外です。課税になるのは駐車場の経営や供花・暦の販売など。2割特例は国税庁が「令和8年9月30日までの日の属する課税期間」までとしており、4月始まりの会計年度なら令和9年3月期が最後です。事前の届出は要らず、申告書に付記するだけで納付額が売上税額の2割になります。

2割特例の期限は令和8年9月30日 ── ただし「9月末が締切」ではない

消費税の2割特例は、インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者になった事業者が、納付する消費税額を売上げに係る消費税額の2割にできる措置である。正式には「適格請求書発行事業者となる小規模事業者に対する納税額に係る負担軽減措置」という。国税庁の特設ページ(2026年8月28日確認)は、適用できる期間をこう書いている。「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間において適用できます。」宗教法人も事業者であり、条件を満たせば使える。

読み方に注意が要る。「令和8年9月30日まで」ではなく「令和8年9月30日までの日の属する課税期間」である。9月30日という日付を、神社の会計担当が申告の締切と読むのは誤りである。9月30日を1日でも含む課税期間なら、その課税期間の全部が対象になる。会計年度がいつ始まるかで、最後に使える期間は1年近くずれる。

会計年度最後に2割特例を使える課税期間その申告期限
4月1日〜翌3月31日令和8年4月1日〜令和9年3月31日令和9年5月31日
1月1日〜12月31日令和8年1月1日〜令和8年12月31日令和9年2月28日
10月1日〜翌9月30日令和7年10月1日〜令和8年9月30日令和8年11月30日

表の申告期限は、国税庁タックスアンサーNo.6601「申告と納税」の「その課税期間の終了の日の翌日から2か月以内に、納税地を所轄する税務署長に消費税の確定申告書を提出する」という定めを当てはめた。宗教法人の会計年度は法人ごとの規則で定まるから、期限も法人ごとに違う。まず規則を開いて会計年度を確かめるところから始まる。規則と代表役員の扱いは「宗教法人の代表役員変更登記 期限2週間と過料10万円」に書いた。法人格の有無で書類の出し先も名義も変わる。

神社の収入のどこが課税になるか ── 初穂料は不課税、駐車場は課税

国税庁の冊子「宗教法人の税務」令和8年版は、宗教法人が行う主な事業について課税・不課税・非課税の一覧表を載せている(21ページ/2026年8月28日確認)。判断の物差しは法人税の収益事業とは別で、同冊子18ページに「その事業が収益事業となるかどうかの区分によるのではなく、原則として事業として行われる行為が対価性のある資産の譲渡などに当たるかどうかで判断されます」とある。

事業の内容消費税の区分
葬儀、法要等に伴う収入(戒名料、お布施、玉串料等)不課税
お守り、お札、おみくじ等の頒布不課税
拝観料不課税
絵はがき、写真帳、暦、線香、ろうそく、供花等の販売課税
墓地、霊園の管理料課税
駐車場の経営課税
土地の貸付け/建物の貸付け土地は非課税、建物は課税(住宅は非課税)
常設の宝物館等における所蔵品の観覧課税
新聞、雑誌、教典の出版、販売課税

表の意味は1つに絞れる。会計を任された総代がまず心配する初穂料やお守りの授与は、そもそも消費税の対象外である。一覧表の注2は「喜捨金等の収受が現金で行われるか、現金以外で行われるかにかかわらず、原則として消費税は不課税です」と書いている。対象外の収入について適格請求書を出す場面は生じない。

意外なのは線香とろうそくの扱いである。同じ注の3にこうある。「ハの『線香、ろうそく、供花』の販売であっても、専ら参詣に当たって神前・仏前等にささげるために下賜するものは、不課税です。」売り物として並べれば課税、参拝のために下賜すれば不課税。物ではなく、渡し方で分かれる。初穂料の表書きは「のし袋と初穂料の表書き」に整理してある。神社に入る金が対価か喜捨かという線引きは古くからあり、戦前の「神饌幣帛料供進社」の指定もその一例である。

宗教法人にとっての本命は、特定収入の按分計算が消えること

宗教法人の消費税計算には、一般の事業者にない手間が1つ乗る。「宗教法人の税務」令和8年版23ページはこう書く。「宗教法人の消費税額の計算においては、一般の事業者と異なり、寄附金等の対価性のない収入(特定収入)がある場合には、課税仕入れ等に係る消費税額の調整についての計算が必要となります。」賽銭も初穂料も、不課税だからこそ特定収入になる(同冊子21ページ注4)。

その調整計算に、同じページが1行の但し書きを置いている。「※ 簡易課税制度又は2割特例を適用して申告する場合には(注)2の調整は必要ありません。」神社にとっての2割特例の値打ちは、納付額が2割になることより、この調整計算が丸ごと消えることのほうにある。収入の大部分が賽銭と初穂料で、課税売上は駐車場だけ、という社ほど効く。

年18万円の駐車場で納付3,270円 ── 総代がすでに払っている負担の内訳

数字は1単位あたりに割り戻す。不動産業をしていると身につく癖で、私はこの特例も同じように扱った。国税庁「2割特例用 消費税及び地方消費税の確定申告の手引き」(令和7年11月版)の概算式は「売上げ・収入(万円)× 10/110 × 2割 = 納税額(万円)」で、同じ手引きが「売上げの約1.8%相当」と併記している。境内の一角を月ぎめ駐車場にしている社を想定し、課税売上ごとに納付額を出す。

年間の課税売上(税込)売上げに係る消費税額2割特例の納付額参考:みなし仕入率50%の場合
18万円(5台×月3,000円)16,363円3,272円8,181円
120万円109,090円21,818円54,545円
990万円(免税点の上限に近い額)900,000円180,000円450,000円

右端の列は、簡易課税制度でみなし仕入率50%の区分に当たる場合の納付額である。事業区分の判定は個別の中身で変わるので、税理士か所轄税務署に確かめてほしい。年120万円の課税売上で、2割特例と50%区分との差は年32,727円。5台の駐車場なら差は年4,909円にすぎない。2割特例で得をする神社と、得はほとんど出ない神社が、同じ「2割特例」という言葉の下に並んでいる。

現金・時間・体力の内訳

現金は、納付額そのものが年3,272円から18万円。申告を税理士に頼めば報酬が乗るが、額は法人ごとの事務量で違うので相場は書かない。時間は、駐車場の入金記録を課税売上として区分して帳簿に落とし、申告書第一表の「2割特例適用」欄に○を付け、付表6を作る作業。提出先は納税地を所轄する税務署長で、磐田市の神社なら磐田税務署(磐田市中泉112番地の4/電話0538-32-6111/管轄は磐田市・袋井市・周智郡。国税庁「税務署の所在地などを知りたい方(静岡県)」・2026年8月28日確認)。中泉は「府八幡宮」のある地区で、税務署はその同じ中泉にある。

体力の欄に書くことは1つ。総代の任期である。会計を2年で引き継ぐ社では、2割特例を使ったかどうかが任期をまたいで残らない。制度の期限が3年半あっても、担当が2回替われば、最初に判断した人はもういない。

この措置の良い点4つと、注文したい点2つ

良い点を先に4つ数える。第一に、事前の届出が要らない。手引きは「一般課税、簡易課税のどちらを選択している場合も、事前の届出なしに、2割特例の適用を受ける旨を申告書に付記することで適用できます」と書いている。第二に、適用は課税期間ごと(Q&A問115)で、年ごとに有利なほうを選べる。第三に、特定収入の調整計算が要らなくなる。これは宗教法人に固有の利点である。第四に、翌年から簡易課税へ移るときの届出期限が緩められている。Q&A問117(令和8年4月改訂)は、翌課税期間に係る確定申告期限までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出せば「その翌課税期間の初日の前日に……提出したものとみなされます」としている。

その上で、氏子の一人として注文したい点が2つある。1つ、「令和8年9月30日までの日の属する課税期間」という正確な文言が、見出しの外に置かれている。特設ページの本文はほぼ画像で作られていて、文字として拾えるのはalt属性だけだった。9月30日という日付だけが独り歩きすれば、4月始まりの法人は1年分を取りこぼす。2つ、宗教法人向けの説明が冊子の18・21・23ページに分かれている。不課税の区分・特定収入・2割特例の3つを自分で結んで初めて「うちは何をすればいいか」が出るのに、その結び方は書かれていない。

今の人数で回すために減らせるもの ── 引き継ぎ簿に3行足す

今の人数で回すために1つだけ減らすなら、私は「会計担当が代わるたびに、うちの社が課税事業者かどうかを一から調べ直すこと」を挙げる。減らし方は引き継ぎ簿に3行足すだけでいい。規則で定めた会計年度。インボイス発行事業者の登録番号の有無。直近の申告で2割特例を使ったかどうか。この3行があれば、次の担当は税務署に電話する前に自分の位置が分かる。

ここから先は、私が窓口で見た一場面ではなく、不動産業をしている者としての考えとして書く。体験としての持ち駒がないので、意見であることを明示しておく。私は「制度は知っている人だけが得をする。それが一番よくない」と繰り返し言ってきた。この特例はその典型で、届出が要らないことは親切さであると同時に、知らなければ何も起きないという意味でもある。土地の売買でも同じで、使える控除も申告書に一行書かなければ無かったことになる。手続が簡単な制度ほど、知らせる仕組みのほうが要る。

腑に落ちていないことも書く。令和8年度の税制改正で、2割特例の後継として「3割特例」が置かれた。国税庁の特設ページの注記は「※ 個人事業者の方は、令和9年・令和10年分の申告について3割特例を適用することができます。」とだけ書いている。法人については書かれていない。宗教法人は法人である。令和8年10月以降に始まる課税期間で神社が何を使えるのかを、私はこの注記から読み取れていない。未確認のまま残す。だから「2割特例が終わっても3割特例がある」とは書かない。

今日できる確認を3つ挙げる。第一に、規則を開いて会計年度を確かめる。ここが決まらないと期限が出ない。第二に、インボイス発行事業者の登録番号が通知されているかを探す。第三に、課税売上になる収入があるかを数える。駐車場、暦や供花の販売、宝物館の観覧料、建物の貸付け。1つもなければ申告の話にならない。土地の貸付けは非課税なので、境内地をそのまま貸しているだけなら課税売上に入らない。境内地そのものを動かす手順は「宗教法人の土地売却は公告1か月 神社の境内地を動かす手順」に書いた。

氏子の一人として、商売の目で見るとこうなる。年3,272円の納付のために、規則を出し、登録番号を探し、付表を1枚作る。割に合わない。それでも「額が小さいから放っておけ」とは言わない。困るのは2年後に会計を引き受ける人だからである。伝統だから続けるべきだとも、もう畳むべきだとも、私は言わない。書いたのは、9月30日という日付の読み方と、初穂料が対象外だという二点だけである。個別の判断は、税理士か磐田税務署に確かめてほしい。

よくある確認

初穂料やお守りの授与に、インボイスは必要ですか。

国税庁「宗教法人の税務」令和8年版の一覧表では、葬儀・法要等に伴う収入(戒名料、お布施、玉串料等)とお守り・お札・おみくじ等の頒布、拝観料はいずれも不課税です。消費税の対象外の収入について適格請求書を出す場面は生じません。同冊子は、相手方が消費者や免税事業者である場合はインボイスの交付を求められることはないとしています。

2割特例は2026年9月で使えなくなりますか。

国税庁は「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間において適用できます」としています。9月30日が締切ではなく、その日を含む課税期間の全部が対象です。会計年度が4月から3月の宗教法人なら令和9年3月期が最後で、申告期限は課税期間終了の日の翌日から2か月以内の令和9年5月31日です。

2割特例を使うのに、届出は要りますか。

事前の届出は要りません。国税庁の手引きは「一般課税、簡易課税のどちらを選択している場合も、事前の届出なしに、2割特例の適用を受ける旨を申告書に付記することで適用できます」としています。翌課税期間から簡易課税に移る場合は、その翌課税期間に係る確定申告期限までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出します。

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出典・確認先

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と、氏子総代や神社庁の窓口にご確認ください。本記事は一般的な情報であり、特定の神社・家・土地についての判断ではありません。

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この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。氏神や祭りの担い手の話は、家や土地をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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