大石浩之の氏神ノート当番自治会氏子総代

当番連絡のLINE化の手順 汎用アプリ12.3%の壁

公開 2026-08-31/文:大石浩之(磐田市/不動産業・宅地建物取引士)

記事内容をもとに生成したイメージ:当番連絡のLINE化の手順 汎用アプリ12.3%の壁
記事内容をもとに生成したイメージです。実在の場所・人物を撮影したものではありません。

当番の連絡をLINEにしたいのですが、うちの地区でも回るものでしょうか

総務省のアンケートでは、管内の自治会でLINE等の汎用アプリが使われていると答えた市区町村は1,741のうち215団体、12.3%です。把握された自治会は544で、全国290,054自治会の0.19%にあたります。最初に移すのは全戸への周知ではなく、返事が要る連絡、つまり当番の欠席と交代だけです。

総務省の「14.4%」はLINEの数字ではない ── 汎用アプリの活用は12.3%

自治会のデジタル化を語るときによく引かれる「14.4%」は、LINEの数字ではない。出どころは総務省自治行政局市町村課「自治会等に関する市区町村の取組に関するアンケート とりまとめ結果」(令和4年2月)の問19で、14.4%はホームページの活用を挙げた市区町村の割合である。LINEやFacebookのような汎用的なアプリは12.3%だった(2026年8月31日確認)。

母数も押さえておきたい。このアンケートに答えたのは全国1,741の市区町村であって、自治会そのものではない。「自治会の12.3%がLINEを使っている」ではなく、「管内にLINE等を使う自治会があると答えた市区町村が12.3%あった」という意味になる。選択肢ごとの内訳は次のとおりである。

手段そう答えた市区町村割合把握された自治会数
ホームページの活用250団体14.4%819
電子メールの活用226団体13.0%1,381
汎用的なアプリ(LINE、Facebook等)の活用215団体12.3%544
Web会議システムの活用77団体4.4%151
その他54団体3.1%57
自治会向け専用アプリの活用26団体1.5%116
該当なし1,307団体75.1%

不動産屋の癖で、私はこの数字を割り戻す。同じアンケートの問1によれば、全国の自治会数は290,054である(令和3年4月1日現在)。LINE等の汎用アプリを使っていると市区町村が把握していた自治会は544だから、割合は0.19%になる。磐田市の300自治会に当てはめれば0.6、計算上は1つも無い。当番表がまだ紙で回っているのは、あなたの地区が遅れているからではない。

ただし544は全国の実数ではない。市区町村が把握できている範囲の合計にすぎず、総務省「地域コミュニティに関する研究会 報告書」(令和4年4月)自身が「市区町村側で個々の自治会等のデジタル化の状況までは把握できていない可能性もある」と断っている。それでも桁は変わらない。

同じ資料の問3では、加入率を世帯単位で出している600団体の平均が、平成22年度の78.0%から令和2年度の71.7%へ、11年で6.3ポイント下がっている。連絡の相手が減る一方で、手段は紙のまま来た。

紙の回覧板は2〜4週間、電子回覧板は数時間〜7日 ── 国が実際に測った

回覧が一周する時間を国が実測した資料がある。総務省自治行政局市町村課「自治会等における地域活動のデジタル化実証事業 成果報告書」(令和6年3月)で、令和5年度に北海道美深町から沖縄県浦添市までの10市町・参加自治会51団体を対象に、鉄道会社の地域交流アプリを使って行われた。

報告書69ページの図表14は、紙の回覧板と電子回覧板を並べている。回覧所要時間の欄は、紙が「2~4週間程度」、電子が「数時間~7日程度」で、比較結果の欄には「情報共有に係る時間を大幅に短縮」とある。68ページの本文はこう続く。

従来、回覧板が回り終わるまでに2~4週間を要している地域もあったが、地域交流アプリの活用により、情報の投稿から閲覧までにかかる時間が短縮され、投稿から2日以内に登録者の半分以上が閲覧し、一部の自治会等においては7日以内に登録者の8割以上が閲覧するとの結果も得られた

同じページに、見落としてはいけない数字がもう一つある。「もともと月1~2回程度だった回覧頻度が、月平均 5.3 回へと増加した」という記述である。速く回るようになった結果、回す本数が3倍から5倍に増えた。利用者アンケートでは「紙による回覧板よりも早く自治会等や行政からの情報を知ることができた」という回答が9割を超えている。

ここから先は私の見方である。回覧が速くなることと、連絡の総量が減ることは別の話だ。速く届く道ができれば、そこに流したい情報も増える。月1〜2回が月5.3回になったのは、便利になった証拠であると同時に、流す側と読む側の手数が増えた記録でもある。当番連絡のLINE化を地区に提案するとき、「連絡が減ります」と説明しないほうがいい。減るのは待ち時間で、増えるのは本数である。

当番連絡で氏子総代がすでに払っている負担を、時間・現金・体力で数える

磐田市には300の自治会があり、5支部・29地区に分かれている(磐田市「自治会概要・一覧」)。市の世帯数72,421をそのまま300で割ると、1自治会あたり241世帯になる。当サイトが登録している市内の神社は146社で、当番はこの世帯を単位に回る。周期の数え方は「磐田市72,421世帯 祭り当番が回る周期を数える」に書いた。ここでは同じ当番を、連絡する側に立って数え直す。

時間。当番表を作って配るまでに、名簿の照合と印刷と配布がある。回覧に載せれば一周に2〜4週間かかるので、9月の祭りに間に合わせるには8月中に出しておく必要がある。配ったあとに始まるのが欠席と交代の電話で、これは夜にかかってくる。受けた総代は当番表に書き写し、前日にもう一度確認の電話を入れる。1本の欠席連絡につき、受ける・書き写す・確かめるの3工程が発生している。

現金。241世帯分の当番表を年2回刷れば482枚になる。コピー1枚10円なら4,820円で、これは私の概算である。金額そのものより、この費用が自治会の会計から出るのか氏子の会計から出るのかが毎年もめる。根拠の違いは「氏子費と自治会費の違い 一括徴収を退けた2002年判決」に整理してある。

体力。留守宅への再訪は夜と休日に入る。祭りが近づけば、境内の掃除と幟の設営が同じ人に重なる。誰が社を保ってきたかは「境内の清掃と奉仕 ── 誰が社を保ってきたのか」にまとめた。連絡の負担はその上に乗る。9月19日の見付天神裸祭のように日程が動かない祭礼では、逆算の余裕がそのまま総代の睡眠時間になる(「見付天神裸祭2026は9月19日 当番が出す時間と現金」)。

当番連絡のLINE化の手順 ── 国の手引きは3段階、地区が決めるのは4つ

手順を示した公的な手引きはすでにある。総務省自治行政局市町村課「自治会等における地域活動のデジタル化ハンドブック」(令和7年3月)で、導入の流れを《Ⅰ 準備期》《Ⅱ 実践期》《Ⅲ 定着期》の3段階に分けている。ただしこれは市区町村が旗を振る場合の流れである。地区が自分で始めるときに決めるのは、次の4つでいい。

決めることかかる目安
1連絡を「周知だけ」「返事が要る」「緊急」の3種類に仕分ける役員会1回
2「返事が要る」連絡だけを移す祭り1回分
3紙と並走する期間を区切り、入っていない世帯の一覧を作る1年
4連絡を受ける役を2人置く次の総会まで

段2で移すのは「返事が要る」だけでいい。理由は工程の数にある。読めば終わる連絡は、紙で回っても総代の手を1回しか使わない。返事が要る連絡は、受けて、書き写して、確かめるの3回使う。返事が1か所に残る形にすると、2回目と3回目が消える。逆に、周知だけの連絡を先に移しても総代の手数はほとんど減らない。

器の大きさは足りる。LINEのグループに招待できるのは、自動追加をオフにした場合で本人を除く最大499人である(LINEヘルプセンター、2026年8月31日確認)。オープンチャットは最大5,000人。磐田市の1自治会あたり241世帯なら、世帯に1人ずつでも1つに収まる。人数で行き詰まる地区は、市内にはまず無い。

使う側の年齢も、思われているほどの壁ではない。総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(令和8年5月29日公表)では、SNSの利用率が60代78.3%、70代67.9%、80歳以上54.3%である。ただし分母はインターネットの利用者で、使っていない人は最初から数に入っていない。

磐田市がすでに何をしているかも見ておきたい。市は「自治会回覧板」のページで回覧文書のPDFを載せ、QRコード付きの様式を配っている(2026年8月19日更新)。LINEなど外部のサービスを使う記載は無い。市は紙の代わりに置き場所を作り、地区は届いたかどうかを確かめる手段を持っていない。この隙間に、欠席と交代の連絡が落ちている。

私はAIもデジタルの道具も毎日使っている側なので、「使うな」とは言わない。ただ、当番の割り振りごとアプリに預けると、誰がどの世帯に何を頼んだかが、役員の頭から画面の中へ移る。移ること自体は悪くない。悪いのは、画面を開ける人が地区に1人しかいない状態で移すことだ。段4で受け役を2人置くのはそのためで、紙の名簿も残す。後戻りのためではなく、引き継ぎのために残す。

減らせるのは連絡の数ではなく、同じ連絡を二度する時間

今の人数で回すために減らせるものを1つ挙げるなら、私は「同じ連絡を二度する時間」を選ぶ。欠席の電話を受け、当番表に書き写し、前日にもう一度確かめる。この3工程のうち、返事が1か所に残るだけで2つ目と3つ目は要らなくなる。増える手数ではなく消える手数を先に数えるほうが、役員会は前に進む。転入世帯への説明を1枚にまとめる考え方は「磐田市の外国人住民6.2% 氏子当番の説明手順」に書いたが、連絡の窓口も同じである。

決めきれていないことも書いておく。LINEに入らない世帯を誰が拾うのかについて、私に答えは無い。並走の負担は結局その地区の総代に乗るし、一覧を作るところまでは提案できても、毎回紙を届ける人まで用意できるわけではない。デジタルから漏れる世帯は、高齢の世帯か転入したばかりの世帯であることが多い。当番がいちばん重く乗るのも、同じ世帯だ。

もう一つ迷っているのは、初穂料や氏子費の依頼を画面で流していいのかという点である。氏子費と自治会費は集める根拠の違うお金だが、同じ画面に並べば同じお金に見える。信仰にかかわる部分を通知の便利さで押し流していいのかどうか、私には決められない。伝統だから続けるべきとも、もうやめるべきとも言うつもりはない。

今日できる確認 ── 当番表に連絡先の行を1本足す

今日できるのは1つで、次に配る当番表に連絡先の行を1本足すことである。欠席と交代の連絡を受ける窓口を、1か所だけ書く。連絡先の無い当番表では、欠席が無断欠席の形で表に出て、翌年の当番表を作る人がまた探しに行くことになる。行を足すのに合意も費用も要らない。

ここで足すのは窓口1本であって、各当番の携帯番号ではない。氏名・電話番号を載せた当番表を配る場合の確認事項は「祭り当番表の個人情報|配布前の3確認」に分けて書いた。

総会までに数えておくとよい数字も一つある。2025年9月から2026年8月までの1年で、欠席と交代の電話を何本受けたかである。20本を超えるなら、返事を1か所に集める価値がある。20本という線は私の目安で、根拠のある基準ではない。20本を3工程で処理すれば60回の手数になる。その数字を役員会に出すほうが話が早い。

結論を今日出す必要はない。当番の形を変えるかどうかを決めるのは氏子である。ただ、電話を何本受けたかだけは、次の祭りが終わるまでに数えておいたほうがいい。数えるのは無料で、数えたあとどうするかは、あとから決められる。

よくある確認

当番の連絡をLINEに移すと、紙の回覧はやめられますか。

すぐにやめないほうが確実です。地区で決めるのは紙をやめる日ではなく、紙と並走する期間です。1年と区切り、その間にLINEに入っていない世帯の一覧を作ります。名前が並べば誰に紙を届ければよいかが1枚で分かり、当番表の配布先も同じ一覧で足ります。

LINEのグループは、自治会の世帯数に対して人数が足りますか。

足ります。LINEヘルプセンターによれば、グループに招待できるのは自動追加をオフにした場合で本人を除く最大499人、オープンチャットは最大5,000人です(2026年8月31日確認)。磐田市の1自治会あたりの世帯数は平均241なので、世帯に1人ずつ入っても1つに収まります。

高齢の氏子が多い地区でも使えますか。

総務省「令和7年通信利用動向調査の結果」(令和8年5月29日公表)では、SNSの利用率は60代78.3%、70代67.9%、80歳以上54.3%です。ただし分母はインターネットの利用者で、使っていない人は含まれません。地区の実数は、名簿に印を付けて数えるほかありません。

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出典・確認先

制度・金額・期限は変わります。相続、税、登記にかかわる個別の判断は、税理士・司法書士などの専門家と、氏子総代や神社庁の窓口にご確認ください。本記事は一般的な情報であり、特定の神社・家・土地についての判断ではありません。

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この記事を書いた人

大石浩之(磐田市/不動産業)

富士ヶ丘サービス株式会社 代表取締役/宅地建物取引士

磐田市で実家じまい・相続・空き家の相談を受けています。氏神や祭りの担い手の話は、家や土地をどうするかの相談と必ず同じ場に出てきます。その現場で見たこと・聞いたことを、判断できるところとできないところを分けて書いています。

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